主 2023-03-12 23:09:40 |
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(やや急ぎ気味に保育園へと向かえば外で友達と楽しそうに遊んでいる我が子を見付け駆け寄る。先生に帰りの挨拶をし車へと戻れば今日の給食や遊んだ内容の話を聞かせてくれ、疲れが吹き飛び表情が和らぐ。)
『今日ね、お父さんとお母さんを助ける夢を見たの。』
「…夢?」
(息子の発言に相手と顔を見合わせた所で自分と相手の頭の中に夜刀神の声が響く。)
『-太陽殿は幼さ故に力が覚醒しきってないのじゃよ。力を発揮出来るのは決まって燈と日影が苦難に陥った時ではあるが、意識自体を操る代わりに本体の肉体は過剰な眠気に襲われるらしい。きっと今日の出来事は夢の中の出来事と思っている。…まぁ、この幼さであれほどの力を使えるんじゃ。末恐ろしいわ。-』
(保育園からの帰り際、担任の先生に聞いた話をふと思い出す。
『太ちゃん。今日急に眠くなっちゃったみたいで。いつもはこんな事無いんですが…。今日はお昼寝二回したので夜ちゃんと寝れるかな…。』
会話の内容に合点が行き、息子に向き直れば笑顔で「すごい夢だね。もっと聞かせて。」と。得意気に“夢”の話を始める様子に表情が綻び、どこか晴れやかな気持ちで帰路を辿って。)
(夜、お昼寝を二回したとは思えない程、寝るには早い時間に息子は布団へと入り寝息を立てていて。きっと疲れたのだろうと相手と話していた所、突如インカムが点滅する。)
「…はい。」
(少し緊張した様子で応答すればどうやらインカムの接続先は先日助けた青年。元い本部の“いつもの人”で。)
『-母はお陰様で無事でした。ありがとうございました。-』
「それは良かった。お大事にね。」
『-あの、すみません夜に。実は本題は別にありまして…。-』
「な、何…?」
『-本部が崩壊し、不思議な事に狐緋人本部の人間も本部に関わる全ての記憶を失っている状態でして。国からの命令で早急に本部を立て直さなくてはならないとの事で。-』
「あー…本部は私が壊しちゃったからな…。え、でも待って。晴明を倒したのなら禍憑鬼はもう生まれないんじゃ、」
『-いえ。それは違います。禍憑鬼は人の負の感情が増大して生まれる存在なので脅威は無くなったとは言えません。晴明はその負の感情を利用していただけに過ぎませんし、…-』
「…あ、それにさっき君は“本部の人間は記憶を無くしている”って言ってたよね。なんで君は覚えてるの?」
『-………言われるまで気付きませんでした。そうだ、どうして僕は覚えてるんだろう…。-』
「…うーん。兎に角、本部はどうなるの?」
『-それが、先程何故か僕の所に国からの連絡が来まして。本部組織の再構築、結成の前責任者を日影、補佐を燈にすると、-』
(青年の言葉に目眩する。つまりは面倒事を押し付けられたって訳だ。そんな事すら気付かず社長になった事を喜ぶ相手を突き落とすかの様に青年は言った。)
『-あ、言いにくいのですが、…勿論これからも市民に存在を知られる訳にはいかないので社長と言えど表向きは工場職員のままです。-』
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