主 2023-03-12 23:09:40 |
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(覚醒した燈の斬撃と呪術によって核が破壊され花弁と共に虚しくも概念だけになったそれを皆で見下ろした。)
『‐終わってしまえば呆気ないものだな。‐』
(ハルアキラに憑いていた闇御津羽神が呟く)
『‐だが、こやつもまた動機は復讐であった。人を捨てても尚所詮は人の子。感情という根本のところは捨てきれなかったのじゃ‐』
(倶利伽羅の言葉に一同が口を噤んだ。)
「じゃあ…まぁ封印するか。」
(疲労困憊の燈を見るとこちらにコクッと頷いてくる。)
「よし。やるか。」
(俺は札を壱枚取り出して眼前に掲げ)
「御・翔けるは喜。爆ぜるは怒。哀愛・楽落。 蘇婆訶蘇婆訶 四情結んで己が生也。」
「狐緋人式封魔閉印 《九尾狐狸》 急急如律令!」
(呪文を唱えると虚空から扉が出現し九尾の狐が顕現する。それと同時に九本の鎖が敵を包み込み縛り上げる。九尾のコン!という一鳴きと共に縛られたそれは扉にのみ込まれていった。)
(『‐終わったな‐』『‐終わったネ‐』と夜刀神と天照大御神が言う。)
「終わった…。」
(周りの緊張感が解け、自分も頭に上った血とアドレナリンが引いていくのを感じ「ふぅ。」と息を吐いた。)
「燈、大丈夫?」
「その…今までごめん。俺は、どんな時も冷静に判断して何でも卒なくこなす燈を凄いと思ってた…最強だと思ってた。でも燈は考えて考えて…弱い部分を見せないように葛藤してたんだね。俺は上辺の燈しか見えてなかった。見ないようにしてた。こじゃあ旦那失格だな。」
「‥‥。それでも俺は燈と夫婦でいたい。何でも言い合えて、バカみたいに笑って。弱さも強さも全部分け合っていきたい。」
(燈に向き直ると『はぁ。タバコ…持ってる?』と。その顔には一片の曇りもなく負の感情や喜怒哀楽全てを受け入れた、笑うと片方の口角が少しだけ上がる、いつもの燈がいた。)
(タバコを取り出すと一本渡し、お互いに火を着けた。)
「そういえば‥‥」
(俺はここにたどり着くまでにあったこと、帰ったら卵焼きが食べたいなど燈と離れたほんの数時間であったことを色々話した。)
「ありがとう」
(色々考えたがそれしか浮かばなかった。)
(聞こえていたのかそうではないのか、燈は穴が開いて吹き抜けた天井から見える空に向かいタバコの煙を吐いた。)
(見ていた神一同はニマニマと顔を見合わせる)
『おとうさんとおかあさんなかよしなったね!』
『‐ソだね!じゃああたしはタイちゃんとこ帰るからお迎えの時間まで遊んでるネー‐』
「おー、ありがとなアマちゃん。」
(天照大御神は太陽の核の中に帰って行った。)
「そういえば燈の刀さ、もっかい魔我津狐緋人になった時、刀身黒くなったよね?あれもヤトかミッちゃんの力?」
(唐突に疑問に思ったことを聞いてみた)
『‐それは違う‐』
『‐いや…‐』
(夜刀神と闇御津羽神が同時に答えるが闇御津羽神が何か含んだような言い方をする)
(『本家から持ち出した妖刀ってことぐらいしか…』と燈が言う)
『‐一応鞘に納めて極めたんだが…この刀は…‐』
(闇御津羽神が説明を始める)
「なに!?なんか厨二心をくすぐる予感!」
『‐あれは闇羽ヶ斬《ヤミノハバキリ》ヤマトタケルの天羽々斬《アマノハバキリ》の対になる刀だ。‐』
(なにそれ。めちゃくちゃかっこええですやん。ミッちゃん!)
(すると夜刀神と倶利伽羅がはっとしたように口を開く)
『‐思い出したわい。その闇羽ヶ斬、打ち直したのも誰か分からん刀鍛冶での。無銘だったんじゃが…その昔、人間たちの間で闇を斬る刀があると騒めいておった‐』
(倶利伽羅が言うと夜刀神が)
『‐その刀は…闇を斬り払うとそこにともし火が差し込んだ、ということから俗に皆こう呼んだ‐』
『‐闇切 燈《ヤミキリアカリ》…と。』
(闇御津羽神が最後に言う)
(えー、厨二心が爆発してしまう!かっこええですやん!)
「ん?燈と同じ名前…」
『‐どおりで。この刀は感情によって善にも悪にも成り得る刀だ。どちらも兼ね備えた魔我津狐緋人である燈にしか使えねえ‐』
「まじかよ!すげえじゃん!燈!」
「ッと。そろそろ保育園迎えの時間だな!行くか!」
(二人は立ち上がり歩き出す。)
((同時にここから何世代にも渡る戦いの幕開けをまだ知らずに。))
((それはまた別のお話。))
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