主 2023-03-12 23:09:40 |
通報 |
(目を覚ましたのはただただ真っ黒な部屋。身体を起こせば目の前には大きな鳥居。地獄の入り口ってやつかな、なんて投げやりに思っては膝を抱えて座り込む。
太陽はどうしているだろうか。後数時間後にはお迎えの時間。日影は戦いを無事終わらせたのだろうか。)
『何を寛いでやがる。さっさと来い。胸はもう痛まない筈だろ。』
(響き渡った声にびくりと反応しふと自分の胸元に触れれば、衣服こそ血で汚れてはいる物の貫かれた筈の傷跡は綺麗さっぱり塞がっていた。ゆっくりと立ち上がりそちらへと近付けば鳥居の奥には大きな龍が佇んでおり。)
「…夜刀神、じゃ、無い。」
『ここは俺の聖域だ。時間が無い。早く印を結べ。』
「印?…え、私死んだんじゃ、」
『死んでいたならお前は今頃三途の川の向こうにいる筈だろ。』
「…生きてたのか。じゃ、じゃあ早く戻らなきゃ。あ、印か。好物、」
『騒がしい女だな。…ああ、好物じゃない。お前の“一番嫌いな物”を寄越せ。』
「嫌いな物…?」
『説明は後だ。』
「私は、…“ダサい奴”が一番嫌い。」
『随分抽象的だな。…ならその“ダサい奴”を特定しろ。じゃなきゃ俺はそいつを喰えない。』
(一呼吸置き、両手を差し出し目の前の神に差し出す。瞳をピクリと動かした神、元い闇御津羽神は面白そうに喉を鳴らした。)
「悲観に走って悲劇の主人公だと思い込む弱虫。周りの優しさも温かさも見えなくなる自分勝手な人間が一番嫌いなんだよね。」
『ほう。自分を差し出すと。姿形存在がなくなったらどうすんだ。』
「無くならないよ。夜刀神との印を結んだ時、地味にこっそり遠隔で家の冷蔵庫確認したんだよね。ビール無くなってなかったから。あれちょっとお高いやつだから。」
『面白い!!!賢い女だ。…否、食い意地が悪いと言うべきか?』
「呑み意地ね、」
(闇御津羽神の大きな口が開き、身体が軋むような感覚を覚え意識を手放した本の数十秒後。______)
(目を覚ましたのは本社奥地。ゆっくりと身体を起こせば相手と、精神の核となった闇自体が戦闘を繰り広げていた。闇はどろどろと地を這い相手の死角を狙うように攻撃を繰り返している。)
「汚い手を使うんだな。」
(小さく呟いた自分の声に晴明は反応し闇がこちらへと距離を詰めてくるも手にしていた黒い刀で振り払い、静かな足音を立てて自ら距離を詰める。)
『-さぁ、やれ。全てお前の思い通りだ。-』
(糸差し指と中指をピンと立て口元に当て小さな声で術を囁く自分に晴明が焦りを露わに攻撃を繰り返すも自分の周りに立つ水の膜が攻撃を妨害してくれて。晴明が操っていた闇が自分に吸い込まれるよう、大きな蝋燭の形へと変形していく。
「我が血を持って阿部晴明に“幸運”を。全ての力を注ぎ込んだ憎しみを形に、今こそ形に。」
(瞬時、術を唱えていた指先に僅かな痛みが走り血が滑り落ちる。床に落ちた血はすぐに乾き、蝋燭の火が激しく揺らめく。)
「今こそ形に!!!!!」
(強風が室内を襲い、蝋燭の火の揺らめき一度弱まった後静かに消える。刀の柄を強く掴み核へと斬撃を放てば核は真っ二つに割れ破片が飛花弁の様に舞う。)
「あんたのお陰で目が覚めたんだ。有難う。“怨に斬る”よ。」
(斬撃の衝撃で中へ舞った身体を反転させ、下手糞な着地をしては相手に照れ臭そうに恥ずかしそうに微笑み「封印はお願いね!あれ、札を飛ばすのに体幹と力がいるから私苦手なんだよね!」と。
『-“災難”では無く“幸運”で呪うとはな。-』
「経験上の話だよ。悲劇の主人公に成り下がっている時に降り掛かる災難は自分をさらに可哀想に思い込む為の材料にしかならない。今の晴明にとっての最悪の地獄は、置かれていた状況の温かさと幸せに気付いて恥ずかしい思いをする事だから。」
『-なるほどな。賢い女だ。…しかしお前の着地は無様だったな。-』
『急に私に地獄与えてくるじゃん。…やめてよ。運動神経すこぶる悪いんだって。でもその分日影が補ってくれるから私は安心して私なりの戦いができるから、良いんだ。』
トピック検索 |