主 2023-03-12 23:09:40 |
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(時空が歪む音と共に燈が消えた。)
(消えた、というより飲み込まれていったと言えば正しいだろうか。)
(飲み込まれる刹那、燈に向かい手を伸ばしたが寸でのところで自分の手は届かなかった。)
「くそ。なんなんだ一体。どうなってる。」
(壁に拳を打ち付ける。一人で考え込んでも答えは分からないが当たらずにはいられなかった。)
「おい、倶利伽羅。今何が起きたんだ?」
(応答がない。分からないがさっき敵から出てきた闇の影響だろうか。)
「お前も飲み込まれたのか…?」
(虚しくも自分の声だけが響いた。)
「くそ、寂しいな。」
(いつも一緒だったから。一緒に戦ってきたから。夫婦だから。俺が馬鹿だから。)
「いや、違うな…」
(ふと一緒に結界を張る修行をしていた時を思い出す。)
(「結界印!」)
(「見て見て燈!これで多分町全体は守れる!」)
(『日影すごい!…ほんとすごいよ』)
(「う…うん。」)
(この時の燈の顔が頭から離れなかった。)
「あの時、燈はなんであんな顔したんだ…?」
(分からない。結局俺は自分の事しか見ていなかったんだ。それなのに燈は…)
『‐それも感情だヨ!ヒカっち!‐』
(どこからかエコーが掛かったような《女の子》の声がする。)
「逃げ遅れた子がっ!!どこだ!!」
『‐違うよヒカっち。ウチはずっとそこにいたシ、そこにはいなイ。‐』
『‐今はヒカっちの頭に直接喋ってるヨ!‐』
「君は一体…」
『ぼくのおともだちー』
「太陽!?」
『おとうさんとおかあさんがぴんち?だからいってくるーっていってた』
「まさか、君は…いや貴女は!」
『‐そんなに畏まんないでヨ(笑)ヒカっち真面目ー(笑)‐』
『‐ソ。ウチは天照大御神。神デース。でも今はタイちゃんのお友達!‐』
『おともだちー!』
『‐ネー!‐』
(頭の中で神と息子がキャッキャッしている事に文字通り頭が追い付かない。)
「あのー…アマ…」
『‐アマちゃんでいいヨー‐』
(oh…食い気味。)
(まぁ神さんがそう言うなら。いいのか?)
『‐oh‥だっテ(笑)ウケるー(笑)‐』
「え・・・」
『うけるー!!!うけるー!!』
「た、太陽?」
『‐いや脳内に語り掛けてんだかラ、ヒカっちの考えてることなんて筒抜けジャン?‐』
「あ・・はい」
『‐まァ少しは落ち着いたんじゃなイ?‐』
(気が付くとアマちゃんのペースに少し冷静になりつつあった。)
「そういえばアマちゃんはなんでここに?」
『‐エ?‐』
「え・・・?」
『‐アハハ!冗談冗談!んっとネ。ウチもアカリン助けたくて‐』
「燈の居場所を知ってるのか?」
『‐もちー‐』
「なら今すぐッ!」
『‐なら今すぐッ!‐』
『‐行きたい気持ちはわかるヨ?‐』
『‐デモそんなんじゃ今のアカリンは救えなイ。‐』
「どういう事だ。」
『‐ヒカっちは向き合わなきゃいけないノ。アカリンの感情ニ。』
『‐アカリンは考え込んじゃうんだヨ。いつも。それはタイちゃんが生まれてからより一層深くなった。母として、妻として、人々を守るヒーローとして、どんどん責任という重圧がのし掛かってくるのに自分が弱い事に劣等感を感じてた。だから戦闘スタイルは基本物理。乱暴に斬撃を飛ばすんだヨ。‐』
『‐ヒカっちはアカリンが一度でも防御以外に結界を張ってるところ見たことあル?術を行使してるとこ見たことある。‐』
(アマちゃんの言葉に数々の戦闘シーンが頭を過る。)
「…ッ。」
『‐アカリンはね、セイちゃん…安倍晴明の子孫でありながら陰陽師ではないんだヨ。‐』
「だが、霧の時、属性印結を!」
『‐あれはタイちゃんと私の力。‐』
「付与、か。」
『‐ソ。でもアカリンは強い。狐緋人として自分の劣等感でさえ押し殺して笑ってみせた。‐』
「あの時も」
『‐あの時も‐』
『‐自分が弱いと自覚してしまったらそこから考え込んで何も守れなくなるかラ。‐』
「アマちゃん、俺自分の事しか考えてなかったよ。いつも作戦とか敵の相性とか考えてくれてたのが燈で、勝手に最強だと思ってたよ。でも違ったんだ。燈は周りを見て自分ができる事を精一杯やってたんだ。」
「本当に弱いのは俺じゃんか。向こう見ずに一人で突っ走ってさ。父としても、夫としても、ヒーローとしても失格だ。これじゃ太陽が向かう未来すら守れない。」
『‐そう。それが《挫折》それも人の子の持つ《感情》の素晴らしいところです。そして‐』
「俺行くよ。燈んとこ。行って、ごめんて言うよ。ありがとうって。」
『‐それが《覚悟》。行きなさい日影。しっかり向き合い、私に示しなさい。‐』
(そこにいたのはギャルみたいな口調のおちゃらけ神ではなく、【天照大御神】だった。)
『‐さて覚悟決まったことだシ!いこっか!‐』
(いつもの口調に戻った。)
「あぁ。燈助けて言ってやる。俺たち二人で最強だってな!」
『ぼくもいるよー!』
「おお!そうだな!太陽がいなきゃ父ちゃん、強くなれなかったし、優しい友達にもあえなかったしな!」
『‐アハハ!じゃあささっとアカリン助けて!‐』
「みんなで最強!」
『みんなでさいきょうー!』
『‐みんなデ最強!‐』
『‐待つのじゃ‐』
(聞いたことのある声に思わず振り返る。)
「倶利伽羅!お前どこ行って!」
『‐これじゃよ。ほれ。‐』
「これは…」
『‐卵焼きじゃよ。燈のな‐』
「は?どうやって!」
『‐儂に寄越した味を再現したのじゃ‐』
「まじかよ。お前料理できんのかよ」
『‐散々そこの太陽の神様に作らされたからのーガハハハッ‐』
「え…?」
『‐まあねー‐』
(倶利伽羅に渡されたそれを一口で食べるが。)
「なんかコクがないなー。燈のは少しマヨネーズが入ってるんだよなー」
『‐そうだったかのぅ‐』
「ぜってー助け出してガチの作らせてやる!」
『‐おうおう、其の意気やよし!この倶利伽羅、全力で助太刀しようぞ‐』
(拳を握り走り出した。足取りは警戒だ。)
『‐卵焼きにマヨ入れなかったノ、わざとっしョ‐』
『‐ガハハハッ流石お嬢。気づきおったか!‐』
(もう俺の脳内はアドレナリンと闘気で何も聞こえない。)
『‐ヒカっち!アカリンはこの建物の最奥にいる!あと…』
『‐ああ。あの下衆、生きておるわい。‐』
「は?ハルアキラはあの時確実に燈が!」
『‐アー生きてるって言っても精神で、だネ。ありゃ。‐』
『‐しぶとい奴よ‐』
「まじかよじゃあ!」
『‐あやつとあやつに憑いておる神が負のエネルギーを使って最後に一泡…的なあれじゃろ‐』
「なんか喋り方アマちゃんに寄ってない?」
『‐アハハ!カラみょんウケるー(笑)‐』
(カラみょん・・・)
『‐お嬢、その名で呼ぶでない///‐』
(いや、ちょっと照れてるやん)
「まあ生きてるなら精神だろうとなんだろうとぶっ飛ばすまで!」
『‐簡単にいくとよいが‐』
「どういう事だ!倶利伽羅!?」
『‐あれは《闇御津羽神》クラミツハ、原始の闇を司る元神だヨ。‐』
(アマちゃんが真剣な声で言う。)
「元?今は倶利伽羅の言うように邪神なのか?」
『‐そんな感ジ‐』
(そうこうしている内に最奥に着く。)
(そこには壁が無数の斬り傷でボロボロになっていた。一面のどす黒い闇と共に)
「これは・・・」
(すると何かがこちらに近づいてくる。)
「燈・・・か?」
『おかあさん・・・』
(一瞬分からなかった。それも其の筈、着用している狐面は真っ黒に染まり背中には黒いカラスの
羽のようなものが片翼にある。)
『これは魔我津狐緋人《マガツキビト》です。』
(どこからともなく二重かかった声が聞こえてくる。)
(またどこかでブチッと血管が切れる音がしたが無視する。)
「てめえ燈に何しやがった。」
『はて、なんの事でしょう。私はただ感情を『共有』しただけですよ。』
(すると魔我津狐緋人となった燈が『どうして。』『なんで。』と呟きながらこちらに向かってくる。)
『‐遅かっタ‐』
『‐下衆が!‐』
(倶利伽羅とアマちゃんが小さく呟きこちらに直る)
(俺は頷くと燈に向かって構えを取って。)
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