薔薇の乙女 2023-03-09 22:09:21 |
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ぁ、…う、…
( 彼に聞こえてしまっていた。熟れた果実のように赤く火照った頬や体は柔らかなブロンドに映え、月明かりが惜しげもなくそれを晒すように照らしている。彼の視線から逃れるかのように一歩後ろに下がってしまっては、胸の前でぎゅっと手を組んではくはくと言葉の出ない唇を動かして。そして暫くして意を決したようにキュ、と唇を噛みしめては、彼のロングコートの裾をちまこく掴んでは耳を澄ませなければ聞こえないような小さな声で「 今夜は、俺がいると、…先ほど言っていたのに、…うそつき、 」と。震える声でぽそりぽそりと小さな子供のように告げた言葉は、淑女というよりは幼いレディのような一言で。周知からか潤んだ瞳で彼を見つめれば、`いかないで`とそのさみし気な瞳が訴えかけているようで。 )
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