薔薇の乙女 2023-03-09 22:09:21 |
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ぁ、…いいえ、よくあることですので…。
( じくじくと痛む指先を優しいサファイアブルーでじっと見つめては、少し困ったように眉を下げて此方を心配してくれている彼へ微笑む。此方の手──もっと言ってしまえば傷口をただ見つめる、指先から流れる血液と同じ赤色の瞳を見ては『血が苦手な方なのかしら』なんて考え、なにか傷口を抑えるものはないかと思案して。なんせロウソクのみを持って外の空気を吸いに来てしまったのだ、傷口を抑えるハンカチもなければ何も所持はしていない。マリアはできるだけ彼へ傷口を見せないようにと流れる血を拭うこともなく薔薇を持つことによって指先を隠せばまるで薔薇から血液の香りが甘く漂うような錯覚に陥る。薔薇の香りと血液の香りが混ざり合ったこの空間は確かに男性には少しつらい状況なのかも入れない、と「 御見苦しいところを… 」と謝罪して。だがしかし傷が深かったのか「ん、」と小さく顔をしかめては、兎に角手当よりも先に早く彼を案内しなければと小さくは、と息を吐いて。 )
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