薔薇の乙女 2023-03-09 22:09:21 |
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元々は母の庭園でしたが、今は私が管理しています。
…今日みたいに美しい満月の日は特に、嬉しそうに咲くんですよ。
( 彼の言葉にふと庭の薔薇達に目をやり立ち止まれば、淡い月明かりと自身の持っている?燭の柔らかい炎に照らされている薔薇たちが映る。どの花も血液のように真っ赤な花弁を開き、噎せ返るような薔薇の強い香りを放っている。決して薔薇の品種に詳しいわけではないが、ここの薔薇はなぜか年中咲き誇っていた。`魔法の薔薇なのよ`なんて母は笑っていたが、いったいどういう構造なのかわからないまま母は逝去してしまった。『薔薇がお好きなのかしら』と考えながらそっと薔薇に手をやり、花を摘む。そういえば今日は薔薇の剪定をしていなかった。そのまま5,6本ほど満開に咲き誇っている薔薇を摘んでいると、「 あッ、…。 」ピリ、と爪先に鋭い痛みが走る。どうやら棘で指先を切ってしまったようで、白魚のような指先から鮮血がぽたり、と滴り落ちる。最近はこんなことなかったのに、と痛みよりも驚きが勝ってはいるものの、なぜか血は止まることなくマリアの手の甲をつ、と流れ落ちて。 )
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