薔薇の乙女 2023-03-09 22:09:21 |
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へ、……あ、や、きゃあ!
( 優しげなテノールに呼びかけられ、段々と朧だった意識も覚醒してきた。暫くぱちぱちと瞬きを繰り返し、月夜を背景にこちらを覗き込む人物が見知らぬ人間だと認識してはパッ、と慌てて上体起こしては自らのネグリジェ姿という無防備な淑女に有るまじき姿を隠すように自分をかき抱いて。先程まで陶器のように白く人間味のなかった肌は朱を散らしたかのように赤くなり、ブルーサファイアは羞恥心からきた涙なのか先程よりも月明かりに照らされて艶々と潤っていて。「 ど、どなた…?どこからいらしたの……、 」ぽつり、と零れた言葉はご尤もな疑問で、思ったよりも声は震えることなく凛と澄んでおり。まるで人間とは思えないつくり物のように精巧な美しさを持つ目の前の男の瞳は、月明かりを背景に妖しく光っていて、どこか目を離せなくなり。 )
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