花詠み 2023-02-26 13:52:45 ID:f4a4a17f9 |
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>81 彩音様
特に変わりばえのしない休日の昼下がり。
自分を買った羽振りのいい主人には、好きなことをしておいでと家を出されて。
特にやりたいこともないんですと食い下がれば、お前はもう少し外の世界を知りなさいとやんわりと嗜められた。
自分の方が長生きをしているのに、皺が刻まれたその手で困った孫をあやす様に触れられれば、強く嫌とは言えなかった。
こうして外を見てくるように言われるのは何度目か。
傷つかないように家の中に籠る自分を心配してくれているのは理解しているが、その優しさが心苦しく思うときもあるもので。
今日も適当に人目を避けて時間を潰そうかなんて考えていれば、何やら道ゆく人が何処かに視線を向けているようで。
視線の先にいるのは、自分からすれば小柄な女性。
カフェやケーキ屋などの外観を眺めては、そこへ入らずに散策を繰り返すという謎の行動をしていた。
主人の娘さんから、ウィンドウショッピングというものを教えてもらったこともあるが、何かこれは違うような気がする。
静かに様子を観察していれば、清々しさを感じさせる晴れやかな表情で休憩を取り始めた。
花憑きだから親近感を覚えたのか、一連の行動に興味を持ったからなのか。
自分でもわからないが、何やら焦った様子の彼女に声をかけてみようと思った。
「あ、あの…貴方もその、花憑きなんだよね…?僕もそうだから、ちょっとお話ししたいなぁ…なんて…」
声に出してみて急に恥ずかしさが込み上げる。
ナンパと言われても仕方のないくらい不自然な、いきなりの声かけ。
嫌なら断ってくれて構わないからと早口で伝えれば、御花が情けないと言いた気に酷く楽しげに揺れる。
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