花詠み 2023-02-26 13:52:45 ID:f4a4a17f9 |
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>>100 梵様
(まるで壊れ物に触れるかの如く握った彼の手は、温かく寛容的に己の手を包み込んでくれた。恐怖心と疑懼のような気持ちを煽られ少し張り詰めていた心に、更なる弛みをもたらしたその手を控えめに握り返して歩き出す。彼と共に歩を進めると、ある程度予測はしていたが、周囲の注目を集めた。こちらを怪訝そうな表情で見ながらヒソヒソと耳打ちしている女性達、ニヤついた卑しい表情を浮かべている男性など様々な視線が飛び交う中、そんな事もどこ吹く風と考え事をしているような様子で一切気にせず、なんなら鼻歌を歌いながら楽しそうに歩いている様は、己の安心感に繋がり優越感にも似た心待ちで淡々と自分も足を動かせた。気にしていないのでは無く、寧ろそれらをも楽しんでいるのかもしれない。彼の半歩ほど後ろに付いて歩きながらそう思いつつ、ふと気が付く。背の高い彼の方が歩幅は大きく歩く速度が速いだろうに、自分が無理無く付いて歩けているのは自分に合わせてゆっくり歩いてくれているからだろう。その小さな気遣いがとても嬉しかった。眩いネオンや如何わしい店など様々な街並みを目の端に入れつつ少し進むと気軽に立ち寄れそうな一軒の食べ物屋に辿り着き、彼は中の店員に馴染みな様子で挨拶をしながら近付いていく。が、彼の紹介とは相反して近寄り難い強面の男性が目に映り、一瞬気後れするも僅かに見せた表情は彼の説明と相違無く優しそうで、人は見かけによらない事を体現しているかのようなオーナーと彼とのやり取りは、彼等が親しい仲だと知るには十分だった。口元に軽く握った手を持ってきてクスリと笑みを零し「はい、とても。」と彼に頷く。その人柄もそうだが、自分にとって何より2人の会話のテンポの良さが面白かった。それにしても、自分は子どもを産み育てた経験は無いし、花憑きのお陰でこれからも無いだろうからその大変さは見聞きした想像でしか無いが、男親一人で、1人でも大変だというのに3人の子育てをやってのけたとは純粋に凄いと思うとオーナーに感服し。)
凄いですね、一人で3人もお子さんを育てたなんて。苦労したんですね。
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