花詠み 2023-02-26 13:52:45 ID:f4a4a17f9 |
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>>94
>>栗花落さん
「 まあ。うふふ、それは大変。 」
彼の言葉にころころと鈴の転がるような声で楽し気に笑えば、可愛らしい御花だわと呑気に思い。赤い花は嫉妬深いとどこかのお話で読んだことがあるけれど、あながちあれは間違いではないのかもしれない。…最も、曼殊沙華が赤かったというのは遠い記憶の中でしかないのだが。
一方此方の御花は我関せずといったように静かなもので、彼の御花のようにこちらに分かりやすく反応をしてくれるどころかせいぜい自分をからかうときぐらいにしか反応してくれないのだ。綺麗なバラには棘があるという言葉があるが、綺麗なボタンにもどうやら棘があるようだ。
「 ごめんなさいね、誰かとお話しするのがとっても久しぶりだったからついはしゃいでしまったの。
どうか機嫌をなおしてちょうだい。貴方はきっと私なんかよりもずうっと美しくて香り高い御花ですもの、拗ねることなんて何もないわ。 」
果たして他人の御花と対話することは可能なのだろうか。そんな事は唯織の脳内でさしたる問題ではなく、まるで小鳥たちと会話するかの如く当然のように彼の御花へと声をかけて。
秋の代名詞ともいえる金木犀に、それから美しい天上の花である曼殊沙華。それはそれは美しいであろう御花たちの足元にも自分は及ばないと。
…アタシが一番でしょうと言いたげな自身の御花のことは感じないフリをして。
>>95
>>カーメルさん
「 あら、大変。ちゃんと塗らなければ女王陛下に首をはねられてしまいますものね。 」
( そうこう話をしているうちに無事に呉服屋へ到着をすれば、彼女へありがとうと感謝の意を述べて。直ぐに裏から出てきて特に無駄な営業をすることもなくもともと頼んでいたものを受け取れば手の感触のみでその肌さわりを確認して。
受け取ったものを大きな淡い桃色の風呂敷で包みそれを「 お世話様でした 」と店員たちに頭を下げて。 )
「 お待たせしました。
無事にお品物が受け取ることができました。 」
( 深々と見事に洗練された仕草で彼女へとお辞儀をしては、桃色の風呂敷を彼女に見せるように持ち上げて。中に入っているのは新しい訪問着。赤・白・金で美しく装飾されたその着物は実に見事な職人芸と言わざるを得ない逸品で。 )
>>96
>>梵さん
「 ま!男性が…。
…ええと、他にどこか痛いところはあります…? 」
彼から告げられた言葉にパッと口元を上品に抑えて驚けば、彼の頬には触れたからけがをしていることに気づけたがほかに痛いところはないのかと恐る恐る問いかけてみて。男女の痴情の縺れというのは古今東西女側が平手をして終わるというのは偏った知識として唯織にインプットされているのだが、男性同士の痴情の縺れというのはさすがに聞いたことがなく、彼のケガがどの程度なものか心配になってしまい。
そもそも男性の平手と女性の平手じゃかかる力が違いすぎるのでハンカチを渡した程度でどうにかなるものなのだろうか…とそういった現場に全くと言っていいほど不慣れな箱入り娘はあわあわと不安そうに手をせわしなく動かすだけで。
「 それに、優しい方ならそもそも頬を張らないわ…。 」
ぽそり、とこぼれた言葉はなぜか彼よりも唯織の方が沈痛そうで、だがしかしこの煌びやかな町では良いカモになるようなお人よし加減で。
食って食われの夜の街では男が女の頬を張るなんてこともさほど珍しくはないし、それにきっと本当に彼の言う通り優しく加減をしてくれたのだろう。この不夜城に似つかわしくない箱入りは、御花で覆われてさえいなければ眉がキュッと悲しげに下がっていたであろう。
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