主 2023-02-11 00:33:03 |
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(細く淑やかな指が顎下に触れ、擽ったい様な心地良い様な感覚を覚えるも此の様な姿を相手に見られてしまった事に僅かな羞恥を感じ距離を取る。
体格の良い猫がしきりに匂いを嗅いでくるものだから悩まし気に少年を見詰めるも少年は相手への説明に必死な様子で。
『其れで、寺子屋の池にもう一回入れば爛は元に戻る筈で。だから寺子屋に行かないとって思って。』
(少年の拙い説明を真剣な表情で聞いている様子の相手を少年の背後からそっと見上げる。
思い返せば己が相手を見上げる事は中々無い事。
何だかもどかしい気持ちになり視線を逸らせば少年は立ち上がる。
『よし。行こう。一応、隠れながら。…あ、先生。ミケさんには大人しくしててねって伝えておくから。』
(少年が蹲み込み三毛猫に話しかけては漸く物陰を伝う様にしながら寺子屋への道を辿って。
(いつもより僅かに時間は掛かった物の漸く辿り着いた寺子屋。池に一目散に駆け、そっと水面を覗き込んだ其の時___。
『えい!!!』
(少年の言葉と共に軽い体が突き飛ばされる。
目を白黒させながら飛び込んだ池、一瞬の水飛沫から視界が戻る頃には、伺える少年の背丈はいつもの高さに戻っており飛んだ災難だったと溜息を溢す。
「…いきなり何しやがる。」
『あ、ごめん。…爛はびっくりしながら池に落ちたからびっくりさせた方が良いかなーなんて、』
(着物の裾を絞りながら相手に向き直れば「面倒掛けた。」と小さな謝罪を述べる。
安堵した様子の少年を尻目に未だ相手の腕に抱えられる大きな三毛猫を指さしては「取り敢えず、家に帰すんだろ?」と問い掛けるも相手には相手の“仕事”もある様で。
暫しの沈黙が走った後、夜中にも関わらず盛大に扉を叩く音がすれば先程の男達が追って来た様子。
相手と少年に下がる様に告げ、刀に手を添えたまま門を開ければ息を切らした男達に詰め寄られる。
『この辺りに大きな風呂敷を持った男が来なかったか。此方の方へ行ったのを見かけたんだが。』
(どうやら男達は相手の昼間の姿までは知らない様子。寺子屋へ来たのも相手の素性を知ってでは無く此方へ駆けて行く様子を見た為たまたま訪ねて来た様で。
「さぁ。見てないな。其れにしてもこんな夜中に何なんだ。」
『“御婦人の猫”が攫われたんだ。俺達は其の犯人を探しているだけだ。』
「…そいつは御苦労様。」
(先程の少年の言葉をふと思い出す。もう“御婦人の猫”にされてしまっている上に相手は犯人扱いかと呆れては去って行く男達の後姿を見送り寺子屋内へと戻って。
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