主 2023-02-11 00:33:03 |
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(依頼を果たすべく屋根裏部屋へと侵入したは良い物の僅かな隙間から見えるのは兄と相手の姿。
最悪な状況に苦虫を噛み潰すも兄の態とらしい一言に苛立ちが走り、もう身を潜めていても仕方が無いと木板が剥がれている箇所から飛び降りる。
ざわつく室内をずかずかと通り無言で隣の襖を開けては逃げ出そうと立ち上がる男の首筋に手刀を落とす。
演者の男と売人の男はそれぞれ相手と兄に己を始末する様に叫ぶが兄は座ったまま楽しそうに酒を飲んでいて。
鞘を抜かないままの刀で鳩尾を突き、もう一人を組み倒せば気絶した三人の男を苛立たしげに見下ろす。
騒ぎを聞きつけた店の女将が呼んだ役人が駆け付け、何と説明しようか口を逃げらせていた所、兄が態とらしく怯えながら役人の元へ駆け寄り。
『御役人様!助かった…三人で酒を飲んでいたら急にこの男達に襲われましてね…。何でも麻薬の売買を行っている者の様で…、…いやあ怖かった。弟が武術を学んでいたのが不幸中の幸いでした…。』
(役人の男達が気絶している男達を雑に抱えた所、其の内一人が表向き役人を務めている事から見知った顔の男の存在に驚きつつ兄に軽く頭を下げる。
台風が静まった後の如く兄の口の上手さにすっかり騙された役人達は男達を連れ店を後にして。
『どうしたの。始末しないなんて。随分甘い事するじゃん。』
(静寂を破ったのは兄。酒を片手ににっこりと自分を見詰める様子に苛立ちは増していく。
この男の所為で依頼はおじゃんだ、その上馴れ馴れしく相手の横に行き酒を注ぐ様に血管が切れそうな感覚さえ感じる。
「あんたの思い通りになると思うなよ。」
『まぁまぁ。そんなに怒らないでよ。それにほら、俺達は麻薬の売人と常習犯を一気に捕まえた立場になった訳だ。御礼も後から貰えるらしいし楽しくやろうよ。』
(兄の言葉に返事はしないまま無言で其の場を立ち去ろうとするも相手を置いて行けばまた兄に関与されるだろうと想像が付き相手の腕を引けば部屋から追い出す様にして「あんたも見ていただろ。依頼は無しだ。もう帰れ。」と。
大袈裟な反応で残念がる兄を無視し、自分は窓から外に飛び降りては一瞬相手と合流しようか悩んだものの兄の目の届く場所で落ち合うのは危険であると判断し花街を立ち去って。
(翌日、孤児荘にて昼過ぎに目を覚ましては自室の襖を開ける。
庭では子供達がいつものように遊んでると想像していたものの、どうやら一人の少年に群がっている様で。
『ねぇねぇ、どこから来たの?』
『いくつー?』
(何事かと子供達の元に向かい割って入れば中心に一人の少年が立っており、ぼろぼろの着物が目に入れば煙管を咥えたまま身を屈める。
「どこから来た。父親や母親はどうした。」
『いない。』
(孤児が自らここへ来る事は珍しくない。恐らくそういった訳有りの子なのだろうと思っては兎に角着物を貸してやろうと立ち上がる。同じ背丈程の少年達に着物を持ってくる様に話していた所、少年の腹の音が盛大に鳴る。
「腹減ってんのか?」
『うん!』
「先に飯食って、風呂に入れ。」
(少年の頭にぽん、と手を置き年長の少女を呼ぶ。『何が食べたい?』と微笑む少女に少年はやや警戒しつつも腹の虫には逆らえない様で『…かつおぶしのご飯。』と答えており。
年齢は13~14くらいだろうか。ひとまず詮索は後にすべきかと思っていた矢先、新しい仲間の登場かと胸を躍らせる子供達が『今日寺子屋に行くんだけど、あの子も連れてって良い?一緒に遊んだりしたい!』と訴えてきて。
本人に聞く様に促した所、子供達は食事中の少年の元へ行き誘いを持ちかけており。
小さくこくりと頷く少年の一言で子供達は嬉しそうにはしゃいでいて。
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