主 2023-02-11 00:33:03 |
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(どうやら相手は己が“兄と間違われた事を不快に思った”と取っている様で、穏やかに微笑む姿に調子が狂う。
本音を話してしまえば楽ではある物の胸の内の感情を素直に打ち明ける事こそ難しいものは無い。
相手に何と無く子供扱いされている様な感覚を感じれば少し面白く無い様な感覚さえ芽生え立ち上がる。
どうやら相手と話をする前に原因は特定できた。
かと言って穏やかな気持ちにはなれないまま、夜分遅い時間の為退散する事にして。
別れ際に「兎に角、彼奴には気を付けろ。」と小さく言ってはそのまま着いてくる猫と共に孤児荘へと戻り。
(一方その頃、兄は自宅にて銀髪の鬘を放り投げては『高かったんだけどな。』と溢し。
明日の依頼の内容を確認し始めれば、どうやら明日は麻薬を売り捌いている表向き役人の男を仕留める事。
依頼をしてきた人間はこの役人に麻薬の支払いが追い付かず多額の借金をした上どうにもならなくなってしまい兄の元へ依頼してきた様で。
小さく溜息をつき欠伸をしては布団に寝そべり瞳を閉じる。
眠りにつく前に浮かぶのはいつも相手の顔。
つい昨日まで会った事すら無かったと言うのに。
直近で脳裏に過った記憶を思い返す。
相手は優しく微笑みながら兄の絵を褒めていた。
其れが嬉しくて沢山絵を描いた。___それなのに、古い記憶の中の兄は“何かの出来事”を表紙に絵を描かなくなった。
記憶の中のあの笑顔がもう一度見たくて、自嘲気味に笑っては『まずは、お友達からかな。』と小さく呟いて。
(翌日、孤児荘へと到着するなり昼過ぎまで眠っていた為のそのそと立ち上がっては顔を洗いに行く。
自室へと戻る途中庭で子供達がはしゃぐ声が聞こえ何事かと目をやれば昨晩の猫と遊びたがっている様子。
しかし猫は小さな物陰に入ってのんびりとしており、子供達の要望どうり出てきてくれる事は無く。
着替えを済ませ町へと出向けば、町娘に囲まれている素の姿の兄が見え颯爽と裾を翻す。
胡散臭い笑顔と口調でへらへらとしている様子は昔と変わらない。
大人しく戻ろうとしたその時、大名の娘に呼び止められては振り向く。
『お久し振り。霧ヶ崎さん。暇でしょ?ちょっと手伝って欲しい事があって。母さんに会いにいきたいんだけど、…昼間と言えど流石に一人では入れないって言うか…』
「先生にでも頼めば良いだろうが。」
『それがね、聞いて。前に付き添って貰ったのよ。でも…綺麗に着飾った女の人達が私の存在を無視して先生に群がるのよ!先生の横には私がいるって言うのに!』
(騒ぐ娘を呆れた様に見詰めては送り迎えくらいなら付き合ってやっても良いかと思うも面倒臭そうな表情は変わらないまま花街方面へと向かって。
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