主 2023-02-11 00:33:03 |
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( 寺子屋にて午後の勉学の準備をする頃、子どもたちに綺麗なお姉さんが来たとだけ伝えられて相手の存在は知らずに部屋に向かう。
部屋の前迄来たところで聞こえるのは楽しげな娘と令嬢の声。
年頃の女性の色恋の会話。弾む声は聞いていて微笑ましいが立ち聞きになってしまう為、襖に手を掛けたとき__『爛、』と名前が聞こえてぴたりと手を止める。
『爛とはお友達からって話したわ。でも同い年の男と比べたら大人びているし男前よね。』
『分かるわ。不器用なようで真っ直ぐで優しい。私も何度も助けられた。…ところでもう名前で呼んでいるの?』
『呼んで良いって了承は貰ったわよ。でも本人の前ではあまり呼ばないかも。』
『それって…大事にしてるってことじゃないの?』
『どうなのかしら。でも彼と居ると楽しいし本当の自分でいられるわね。…依頼抜きでも来てくれるのかしら。』
『…依頼?』
『…!なんでもないのよ。…菊先生、お忙しいみたいね。』
( そんな二人の会話、相手の話だが何故か胸がもやつく。
己も相手のことを然程知っているわけでもないのに相手を知ったふうに話されるのが嫌で。
然し此れでは本当に立ち聞きの為、小さく息を吐くと襖を開き
「おまたせ、ふたりとも気が合うみたいで何よりだよ。…綺麗なお姉さんって貴方のことだったんだな。」
( と、二人には裏の顔も知られているため特に何も装うことなく話し、令嬢からは謝罪だと例の教材一式を渡される。
正直己も令嬢には色々と能力やら何やら使っているため謝らなければならないのは此方もだが渡されたものは礼を言って有り難く受け取り。
『貴方の此処最近の街での噂は聞いてるよ。雰囲気が柔らかくなって親しみやすくなったって。傍にいる番犬の影響が大きそうだけど…変わろうと努力して行動に移せるのは中々出来ないことだと思う。正直、今日会って驚いたよ。』
( あの令嬢が此処まで心を開けたのは相手のおかげ、歳も近いしお似合いだなとつい思考がずれた時、娘が『あ!』と大きな声を出して。
『何よ、いきなり大きな声を出して、吃驚するじゃない。』
『私、先生と霧ヶ崎さんに話があったんだわ。…この前先生から借りた画集について、ちょっと気になることがあって…、』
『あら、3人のほうが話しやすいならお暇するわよ?』
「いや、貴方を一人では危ないから帰せない。…というか3人でと言うことはあいつも来てるのか。なら尚更、あいつの任務のためにも貴方には残っていて貰わないとな。…多分子供たちに掴まってるだろうから呼んでくる。…改めて、教材ありがとな。」
( 教材一式の入った袋を軽く掲げては二人を残し一旦部屋を出る。
教材一式を別室に置いたあと、キャッキャとはしゃぎ声が聞こえる外へと足を進めれば孤児荘と寺子屋の子供たちにもみくちゃにされる相手の姿が。
一人は相手に肩車して貰い髪をぐいぐい容赦なくひっぱり、僕も私もと相手の足に掴まったり手や服を引っ張ったり後ろから抱きついていたりと賑やかで。
長身で細身の相手が小さな子どもたちに弄ばれる様子は微笑ましくつい頬が緩むも、一切助ける気がない素振りで「…楽しそうだな。」と笑いを堪えた風にぼそりと零し少し離れたところで傍観して。)
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