主 2023-02-11 00:33:03 |
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( 相手の動きや花魁との関わりは知らず、夕刻になれば大名の娘である町娘を念のため家まで送り届ける。
そして偶然か否か、今宵は花街での依頼があり。
内容は簡単なもので遊郭が発注を掛けた薬を送り届けること。
遊郭で使う以上真っ当な薬ではないが身体に大きな害はない媚薬の類。
相手のことも気に掛かるし、町娘のことも知らぬ振りはできないため密売ついでに情報が得られればと。
依頼の時間になれば密売時の恰好をして花街へ向かう。
表通りからは外れて裏路地を進み、遊郭の裏口へと進めば何食わぬ顔で戸口を開けて。
すると待ち構えていた見張り役の男が紙に包まれた密売金を出してくるも、嫌にその紙包みが厚く。
「…額を間違えていないか?」
『自分用に欲しいんだ。どうせ多めに持ってきているんだろう?頼むよ。』
「仕方ないな…。」
(不快感はあるが金はきっちり出しているので、薬を多めに渡す。
そんな時、裏手で休んでいるのか遊女の声が聞こえてきて。
『聞いた?姉さまが男を部屋に連れ込んだ話。』
『その言い方やめなさいよ。違うわよ、何でも親しい古い友人だそうよ。』
『あんな姉さまの嬉しそうなお顔、なかなか見ないわよね。』
『殿方も素敵だったわ。銀髪できれいな紅い目をしてた。』
『あんな素敵な色男に私も指名されたいわ。』
(そんな会話が聞こえて、真っ先に浮かんだのは相手の姿。
銀髪に紅い瞳なんてそうそうない。
相手もこの遊郭に来たのだろうか。
花街で遊ぶ印象はないため依頼か情報収集だろうが、何故か胸奥がざわつき。
そのせいで見張りの男の話が耳に入っておらず。
『おい、聞いているのか。』
「すまない、なんの話だ?」
『だから最近、此処の遊女の隠し子に報奨金が掛けられてるって話だよ。金も其れなりに持ってるらしいし、あんたも何か情報があれば恵んでくれよ。』
「興味ないし、何も知らないな。」
(無表情に吐き捨て用は済んだとばかりに再び裏口から遊郭を出る。
何も知らない、と言ったが恐らく隠し子とは大名の娘のことなのだろう。
思いの外、裏の界隈で話が広まっているらしい。
ともすれば町娘の身の安全が危ぶまれる。
相手も動いているかもしれないが、何かあってからでは遅いため路地裏を進み町娘の暮らす家へ向かって。)
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