主 2023-02-11 00:33:03 |
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( 昼時、寺子屋にて元気な町娘が子どもたちと遊ぶ様子を見守り、なにやら物音がした気がしたが相手だとは気が付かずにその後も何事もなく時は過ぎる。
夕刻になり子どもたちも町娘も皆帰れば一息付くも、ずっと朝方見た画のことや相手の事が引っかかっており、約束の時間迄と書庫へと向かう。
棚の奥へと進めば過去の歴史やその土地に流れる逸話などが記された本を探り、最近脳内に流れる映像について手掛かりはないか調べて。
然し、能力者のことは記されていてもぴたりと嵌まるような内容は直ぐには見つからず、時間を掛けて調べるしかないかと諦め掛けた時だった。
数冊並べられた本の後ろに風呂敷で包まれたものが隠されており、ざわつく胸を抑えながら其れを取り出して風呂敷の結びを慎重に解く。
中から出てきたのは古びた帳簿とくたびれた黒い布。
どちらもぼろぼろだったが己が持っているものと相手が使っているものと似ていた。
まさかと思いながら帳簿を開いて見ると、其処には己が普段記すような日々の日常や約束事が書いてあり、重要な誰かと会う約束でもしたのか時刻や場所に所々線が引いてある箇所がって。
「…今夜真夜中九つ、」
( 指先で己と良くにた字をなぞり、もう1つの黒い布を見る。
己は此れと良く似たものを知っている気がする。
そこでハッとなれば帳簿と黒い布を大事に手早く風呂敷に包み直して自室へと走り、忙しなく押し入れの襖を開ける。
そして奥にある木箱を取り出して中から更に小さな箱を取り出すと蓋を開けて。
その中には先程見たものとそっくりの黒い布。
然し先程のものと比べて新しく布もしっかりとして。
此れは己が此の地に行き倒れ家主に拾われた時、己が懐に持っていたもの。
何故忘れていたのか。関連性がないとは思えずにこくりと息を飲む。
そこでいつの間にか相手との約束の時間が迫っていることに気がつけば、今持っているものを風呂敷にまとめて孤児荘へ向かって。
( 孤児荘に付くと門を叩き相手が出てくれば焦ることでもないのに相手の手を取って足早に建物内入る。
流石に部屋にズカズカ上がり込むことはしないものの、今更だが馴れ馴れしく相手の手を掴んでいたことに気が付きパッと離して。
「悪い、つい気持ちが焦って。…あれからまた色々と御前に聞きたいことが出来たんだ。…御伽噺を信じる訳ではないが俺と御前の先祖には何かしら関わりがあるように思えて…。あと、此れなんだが見覚えはあるか?」
( まだ玄関口で少し早口に言えば持ってきた風呂敷を取り出し、帳簿や二枚の黒い布を見せる。
逸る気持ちを抑えて返答を待って。)
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