主 2023-02-11 00:33:03 |
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(令嬢の問い掛けに少しの沈黙が走り、名前で呼ぶのは構わないと言った後想い人という存在に僅かに頭を悩ませる。
_何故か相手の顔が浮かんだ。
今一番憎らしいと言っても過言では無い相手の存在。
「想い人か…、俺にはよくわからないな。」
率直な意見を述べ抹茶を飲み干しては令嬢も其の先は何も言わず、店主を呼び会計をしようとして。
『あ、私が払うわ。私が行きたいって言ったんだもの。』
「おい、貧乏人扱いか?流石に其れは、」
『…前に、通りすがりに此処のお店に文句言ってしまって。女の子達がお店ではしゃいでたのが羨ましくて…』
「…なるほどね。あんたは問題ばっか起こしてんな。」
令嬢はおずおずと店主にお金を渡しては店主が釣りを持ってくる。
『あ、お、お釣りはいらないわ。』
『いやいや流石にこんな金額…当分団子には困らないだけの金額ですよ。』
困ったように冗談めかしていう店主に令嬢はぶんぶんと首を振り『お、美味しかったから!また来たいの!…どうしても受け取って貰えないなら先払いって事にして頂戴。』と。
店主は優しく微笑むと『お姫様に気に入って貰えたならうちも繁盛店間違い無しだ。』と嬉しそうにしていて。
相変わらず何処かつんつんした様子は解けない物の、令嬢の雰囲気は以前と比べて非常に穏やかで。
(貴人宅に送り届けると令嬢は自分を見上げ『夜のお誘いは、もうしないわ。だから貴方が想い人がなんだか、誰なのか気付くまでは良い友人でいて欲しい。』と言われ。
無言の見詰めていると『お友達すらいないのよ。私。だから恋人とかはまだ早いし、お友達からって言っているの。本当に鈍感ね。もし貴方に心から想える人がいたら応援させて貰うから。』と真剣な表情で言って来て深く意味も考えないまま頷き令嬢と別れ孤児荘への帰路を辿り。
(孤児荘へ到着すると丁度子供達が寺子屋から帰って来た頃。
手を洗い終えた年長の少女に呼び止められ懐から出された文を受け取り其れを開けばどうやら相手からの物で。
初めて見た相手の字、其れなのに何故か見覚えがありまたあの頭痛が襲い掛かる。
年長の少女が『兄さん!?』と声を上げ自身を支えようとする中またあの記憶。
「-文通でのやり取りは組織に表沙汰になったらまずいし、読んだらお互いすぐに燃やそう。-」
銀髪の男の言葉に頷く長髪の男。
(そしてまた場面が変わる。
銀髪の男がいるのは内装こそ少々古臭いが自分の自室其の物。
荒々しい手付きで畳を剥がすと、畳の下には大きな木箱があり、其の中には沢山の文が入っていて。
「-菊、…-」
小さな声で呟いた銀髪の男はぐしゃりと手紙を掴み大粒の涙を流す。
(頭痛が綺麗さっぱりと治まり、少女を宥めては夕餉の時間まで自室に篭る。
先程の記憶の中で見た、長髪の男からの物であろう文の筆跡は相手とあまりに似ている。
目の前の畳を力任せに剥がせば其処には記憶の中で見た木箱があり驚きのあまり尻もちをついてしまい。
木箱を力任せに開けてはぼろぼろに劣化した大量の文。
無言で木箱を閉め畳を戻せばもどかしい感情に駆られ「_俺に、何を伝えようとしてるんだ。」と過去の自分と思しき銀髪の男に呟く。
「行くよ。其れで満足か。」
一人でにそう呟くと頭の中に直接木霊する声。
「-そうしてくれ。御前は俺みたいになるな。-」
(僅かな苛立ちを隠し、子供達に呼ばれと夕餉を済ませては子供達が寝静まった頃渋々寺子屋へと向かう。
最近は相手に関わるとやたら邪魔が多い。
今回も相手の罠であるかもしれない事を考慮しては屋根へと上がり人目を完全に避けるべく周りに警戒しながら自分の匂いしかしない場所を辿る様にして。
漸く寺子屋の門の前に到着し、あまり大きな音を立てない様に門を叩いては、警戒を解かぬまま刀に手を掛けたままで。
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