主 2023-02-11 00:33:03 |
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(寺子屋にて、中より声はするものの、もう幾度と無く叩いた門は一向に開く気配は無い。
やむを得ないと門を勝手に開けると、瞬時。眼前に落下してくるは孤児荘の少年。
野菜の入った籠で受け止めると少年はこちらを見るなり少し驚いた様な表情で『あれ?兄ちゃん何でここにいるの?』と。
お前…あれほど危ない事はすんなって言っただろうが
(軽く頭を小突き、正面を見ればこの寺子屋の主であろう相手の姿が見え軽く会釈をするも己が口を開くよりも先に相手の背後より大きな声が響き。
『こら!!!!!遊び回らないって約束したから連れて来たのに!!!!!ごめんなさい先生………って!兄さん!?どうしてここにいるの!?』
向こうから走ってくるは孤児荘の年長の少女。
最近やたらと寺子屋に通い詰めては『私…将来は寺子屋の先生になりたいなぁ…』なんて頬を染めながら言っていたのも、相手の容姿をまじまじと見ては「そういう事か。」と。
自分の小さな一言に少女は顔を真っ赤に染めると己の肩を勢い良く叩いて来て。
少女が少年を引き摺る様に中に入って行ったのを見送ると相手に一歩近づき野菜の入った籠を渡す。
街角の八百屋の女将からだ。渡してくれって頼まれたんだよ。
(相手に渡した籠とは別のもう片方の籠の中の大根は先程少年を受け止めた際の衝撃でぽっきりと折れていて。
自分が説教せずとも後でみっちり少女に説教を喰らうであろう事を安易に想像しては相手に今更ながらの挨拶をする。
最近あいつ等があんたに学問を教わっていると聞いた。俺はあいつ等の親みたいな者で…まぁ、話すと面倒になる。
月謝はこれまでと合わせて町外れにある孤児荘に請求してくれ。
そこが俺の家だ。
(元々の口下手もあり要点だけをつらつらと話す。よくよくと相手の顔を見れば、町娘が騒いでいる役者も顔負けの容姿。これまで学問になど興味も示さなかった孤児荘の少女がこの寺子屋に通い詰めるのも安易に納得が行った。
自分よりは年上であろう落ち着いた雰囲気と、一見女性と言われても疑わぬまでの整った顔立ち。
優しげな雰囲気を身に纏ってはいる物の気になる点が一つあり。
己は鼻が効く。
昨日令嬢が囚われていた屋敷には鼻に五月蝿いまでの香が焚かれており、僅かにその香の香りが鼻を突いた。
香の香りは風呂に入ろうとも微量に残るものだ。
しかし野蛮な者達が集まる様なあのような場所、眼前の相手に縁があるとはとても思えない。
きっと自身に香りか染み付いているままなのだろうと己を納得させると用事は済んだと言わんばかりに裾を翻し。
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