主 2023-02-11 00:33:03 |
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( 時は朝方、寺子屋に隣接する住まいにて身支度を済ませた後、寺子屋の教室の掃除をするところ。己の心の内は穏やかではなかった。理由は昨晩の密売人としての依頼にある。依頼内容は何処からか攫ってきたとある貴人の令嬢の身代金をその父親から収奪する仲介に入ること。普通の密売人の依頼として逸脱しているが金の為なら仕方ない。手を黒く染めた頭の弱い父親を脅すことなど容易いことだと軽んじていたが、いざ依頼場所に来てみれば令嬢は居ないどころか肉塊がごろごろ転がった血祭り状態。既に生きた人の気配はなく、痕跡もない。そして何よりも目を惹いたのは一切無駄のない鮮やかな切り口___
『こりゃ、やられたな。敵は何人だ?まさかこの人数を一人ではないよな。全く面倒なことになったもんだ。…勿(ナカレ)、この場の報告は任せた。報酬は無くなるだろうしお役所様が嗅ぎつけて来る前に俺はお暇させてもらうよ。』
「おい待て、ッ…逃げ足だけは早い。」
と共に連れ立った組織の男にとんずらされて面倒な事後報告を押し付けられた挙げ句、当然のことながら報酬はおじゃん。無駄足を取らされたが故に穏やかではない心がここにある。
_でもあの切り口は本当に多人数でやったのか?と、そろそろ子どもたちが来る時間か。
( 気持ちを切り替え一つに結んでいただけの長髪を簪で結い上げると外へ出る。
『あ、菊にぃ!見て見て!俺こんな高いところ登ったよ!すごいでしょ!』
「…なんでまたそんなところに!危ないからじっとして、そんなに動かないで…!」
外に出て幼い少年の声が聞こえてきたかと思えば、少年は寺子屋の門近くの大木の上に登りキャッキャッとはしゃいでおり。
元気は何よりだが落ちれば骨折は免れない高さ。はやく降ろさせねばと思った矢先、少年が足を踏み外しその小さな体が大きく下へ傾いていく__、
大木までの距離は走っても間に合わない。でも“キズを付ける訳にはいかない”
無理でもと大きく大木に向かって足を踏み込み__ )
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