主 2023-02-11 00:33:03 |
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(夢の中だろうか、深い微睡の中で銀髪の男が隣にいる美しい長髪の男に微笑みを浮かべている。
己によく似ている、否、似ている所の話ではない。
服装こそ僅かに昔っぽさを感じる物のあれは確かに自分だ。_そして、隣にいるのは、___顔がぼやけて良く見えない、しかし隣にいる男は相手に余りに似ていて。
不思議な夢だ、しかし夢というよりは記憶に近い何かを感じる。
自分はあんな表情が出来たのか、相手はあんな顔をして笑うのか、なんて考えていては銀髪の男の声が頭の中に木霊する。
「-菊、お前側にいるなら俺は“化物”では無く“人間”として生きられるんだ。だから、-」
言葉の続きは聞こえなかった。
夢にしては相手の髪に触れる感覚に生々しさを感じる。
しかし子憎たらしい相手が登場しているにも関わらず、何故か心中穏やかで、尚且つ居心地が良くて___。
「___き、く…。」
無意識に相手の名前を呟き目を覚ませば、またもや見慣れない部屋、…に相手の姿。
がばっと起き上がり距離を取るも着替えかけの自分の姿に気付き、相手が着替えを持って来てくれたのかと察し、まだ少しだけふらつく身体で着物の前部分を直す。
「悪い。あっさり捕まった。折角知らせてくれたのにな。大した薬だ。」
あの夢の後故何処か居心地が悪く、罰が悪そうに視線を逸らしてはきっと自分の身体を見たのだろうと。
「嫌なもん見せたな。_まぁ、気にしないでくれ。此処数年身体張る仕事ばっかりだったんだ。」
適当な言い訳を付け着替えを済ませると、此れからどうしようものかと。
そもそも今夜は依頼が入っていたのに貴人の令嬢が其の依頼を別日にするように金に物を言わせていた。
だが令嬢の家へ通うのも依頼は依頼。
今回ばかりはどうにもならなそうだし埋め合わせをしなければ、なんて考えていれば窓一つ無い部屋をぐるりと見回す。
まだ相手が刀を持って来てくれているとは知らず、急行突破で逃げるのが唯一の手だが相手も関わっている以上、己がそんな事をすれば相手に危害が行くのでは無いかと。
自分自身なんでこんなにも相手を気遣っているか分からず、暫くの間沈黙が走り。
_逃げないから、あんたも少し寝ろよ。どうせ深夜か明日まで動けないだろ此れ。俺が動けたとしてもあんたが罰せられるぜ。
(窓こそないもののそろそろ夜になる頃だろう。部屋にて己の私服の懐から煙管を取り出し咥えては頭を悩ませる。
今夜か明日の朝、大名はこの部屋を訪れるだろう。
昼間、あの香の中でも平気でいた大名と従者は何か対抗薬を服用していた筈。
ならば、今夜も同じ手を使って来る事だろう。
刀が無いなら物理技で行くしか無い。
此の部屋に香の匂いがしない事から、相手はやはり完全に大名側では無いのだと。
ならば相手に手を借り、一芝居打って隙を見て相手も無理矢理一緒に連れ出すか、と。
作戦を相手に伝えるべく向き直っては「なぁ、菊___、」と呼び掛けた所で一筋汗が流れる。
「子供達が、あんたの名前呼んでだからだ。」
聞かれてもいないのに無愛想に言い訳をしては共に屋敷を抜け出す作戦と、抜け出した所で相手は手強い為その後の策を相談しようと口を開き。
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