主 2023-02-11 00:33:03 |
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「…丁度その男の情報を得て来たところだ。でも俺の出る幕はなかったみたいだな。一杯付き合うのはいいが、その男の見張りを俺にさせてほしい。」
( ずっと走ってきた為僅かに上る息。其れを整えながら室内を見回して現状を把握し、嫌悪感が顕にならぬよう嘘ではない言葉を口にする。
実際に初めて目の当たりにする相手の姿。その姿云々よりも大名は我が物顔で触れるのが何故か気に障る。
距離の近い大名から自然な動作で少し離れれば従者が持ってきた酒を継いでやり。
『見張りか。時間に制約のある御前に務まるのか?』
「確かに見張れるのは夜が大半だ。たが俺は薬や香にある程度耐性があるから中和剤が無くともこの男を弱らせる為に香を焚いた部屋に長時間いられるし、貴方と飲むならやっぱり夜が良い。」
( 酒の入ったお猪口を揺らして軽く喉に流し込み、何となく大名が己のことを気に入ってくれているのは察していたため、そこはかとなく匂わせる笑みを浮かべて。
( 時は数刻後、結局あの後大名からは見張りの務めの承諾を得て、大名が酔い潰れる迄飲み交わし、まだ意識のない相手を抱えて別室へ移ってきたところ。
大名の部屋程ではないが壁や障子に彫刻や金粉が散らされたちゃんとした部屋。だが相手を軟禁する小屋であることに変わり無い。
今はその部屋に相手と己だけ。日も暮れ始めており、相手は部屋の真ん中に敷かれた布団で足枷を外し眠っていて行灯の光がその白く端正な顔をぼんやりと照らしていて。
「…寝顔はまだまだ子どもだな。」
( ボソリと呟き疲労の浮かぶ目元を見て眉を寄せる。
相手が目覚める前に着替えだけでもさせておこうかと今着ている寝間着に手を掛けては前に一度、そして先程も見た傷が顕になって。
二十に届かぬ大人と呼ぶにはまだ早い相手が背負うもの…己には全く関係のないことだが何故か突き放せず、ほぼ無意識にその傷に触れていて。)
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