主 2023-02-11 00:33:03 |
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(のんびりとした足取りで丘へと向かっていた所、唐突に相手が現れては、其の細腕からは想像も付かない力で引っ張られ路地裏へ連れ込まれて。
僅かに身構えるも何か此方に危害を加えようとしている様には伺えず落としかけた煙管を咥え直す。
“大名が狙っている。”“特殊な鎮静剤を売った。”
其れは恐らく相手の仕事内容でもあり、尚且つ簡単に他人に口走って良い内容で無い事は容易に分かり。
何故自分に其れを伝えて来たのか、皆目見当も付かぬまま僅かに眉間に皺を寄せては斜め下へと視線を下げる。
自分は薬には滅法弱い。
無言のまま考え込んでいた所、いつの間に襟首に付着していたのか令嬢の物であろう紅を指摘され怠そうに襟元を乱し紅を擦る。
_嗚呼、あの女の部屋は香の匂いが強くて参る。残念だがあんたが想像している“お楽しみ”は何にも無かったよ。化物はおっかなくて御免らし、
(相手が自分に対しての情報を知っているとは露知らず言いかけた言葉を止めては着物を叩いて香りを取ろうとする仕草で言葉の続きを誤魔化して。
そして自分は何故相手に弁解地味た事を言っているのかと疑問に思い溜息を吐く。
煙管を懐へと仕舞い「まぁ、気を付ける。だがあんたが其の内容を俺に話すのは問題あるんじゃないか。何で大名様が俺を狙ってんのかは知らないが少なからずあんたも関与してんだろ。」と問うも此れでは相手を気に掛けてやっている様では無いかと。
何故だか今日は調子が狂う。
眉間に皺を寄せ、相手の返答も聞かぬまま其の場を後にしようとするも一度足を止め、相手に背を向けたまま「取り敢えず、礼は言っておく。有難う。」と一言だけ言いやや大股で足早に退散して。
(丘へと辿り着き、いつもの大木の下へ座り込む。
そういえば自分は相手の名前すら知らないな、と思うも孤児荘の子供達が相手を『菊先生』と呼んでいた事を思い出し。
「………菊、?」
名を口にした瞬間刺す様な頭痛が走る。
ぼやけた微かな頭の中、自分によく似た銀髪の男が嘆いている映像が浮かぶ。
「-菊、どうして俺を置いて行った。-」
銀髪の男が苦しそうに悲しそうに呟いた言葉が頭の中に反響した所で不意に頭痛が治まり、今の出来事は何だったのだろうかと。
到底理解も出来ないまま立ち上がっては、疲れているのかもしれないな、なんて呑気に思い孤児荘への帰路を辿って。
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