主 2023-02-11 00:33:03 |
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(一度孤児荘へと帰宅し子供達の就寝を見届けては気乗りしないまま再び孤児荘を後する。
やはり今回の事を仕組んだのは相手で間違い無い。
依頼を全うしただけというのは所詮己の言い訳でしか無く、仕返しをされても文句は言えないのを理解しているからこそ心底腹が立ち。
重たい足取りで屋敷へと辿り着けば、裏口から内部へと入り令嬢の部屋の襖を叩く。
襦袢のみの姿のまま出て来た令嬢から匂う牡丹の香りに眉を顰めるも、何処と無く胡散臭く表情を和らげては誘われるままに部屋へと入る。
『約束を忘れてたみたいだったから来ないかと思ったわ。』
「そんな筈無いだろ。先に金を出してくれ。其れが条件だ。」
『駄目よ。だって貴方が私を満足させられるか分からないじゃない。お金の話は後よ。』
此の令嬢、容姿こそそこそこ美しい物の性格が非常に悪い事は街でもかなり有名で。
以前令嬢が街で散歩をしていた際に、走り回り遊んでいた子供が令嬢にぶつかってしまい着物を汚してしまった為、幼い子供相手に力任せに平手打ちした挙句、其の子供の親には高価な着物を弁償させたとか。
こうなったらとことん演技をしてやり此の貴人の家ごと喰らい尽くしてやるのも悪くない、と大層大きな悪巧みを考えては令嬢の首筋に顔を埋めゆっくりと押し倒す。
「綺麗な御令嬢に買って頂けるのは俺としても有難いよ。金には困ってるんだ。普段身体だけは売らないんだが、あんただけは特別だ。…どういう意味か察してくれたら助かる。」
胡散臭い台詞と共に切なげな笑みを貼り付け令嬢をそっと抱き締めれば其の死角で表情を殺し、どう利用しようかと。
兎にも角にも汚い手を使って民から巻き上げた金額相応の物は返して貰おうと企てていて。
(其の頃、用事は済んだと下がろうとする相手の腕を強引に掴んだ大名は相手の顔を覆う布を奪い払い。
普段民には何の興味も示す事も無く、偵察は愚か、街と言えば花街くらいしか碌に行った事も無い為、相手が寺子屋を営んでいる事は知る由も無く。
『ほう。随分美しい顔をしている。』
下卑た笑みで一言言えば、相手の顔を掴み視線を合わせる。
いきなり『情夫になれ。』といった言葉を使う事はせず、まずは相手を成るだけ自分に近付けて行くところからだと画策を練っており。
『今回の報酬だ。御前の事が気に入った。狼男の捕獲までも協力を頼みたい。何、報酬なら山ほどやろう。』
“狼男”の正体とやらは家臣達を使い調べを進めている為所詮其れは口実でしか無い。
相手が断れる筈など無い事を知りつつも、酒を煽ってはのんびりと相手の返事を待っていて。
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