主 2023-02-11 00:33:03 |
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(孤児荘は広い。其の上造りは決して新しくはない。
鼠の音に起こされるのは日常茶飯事だが、ほんの僅かに何者かの気配が入り混じっておりこの状態で寝付ける筈も無く入り口の門へと向かうもしっかりと施錠されていて。
其の流れで裏口へと向かうと扉下の土の擦り具合から何者かが潜入して来た事は間違い無く寝巻きのまま駆け出す。
昼間とは打って変わって静かな街、自分が依頼を受ける際には裏通りを通る。もし先程侵入してきた者が同職であれば、と裏通りに曲がったのと同時に先方に見えるのは孤児荘の少女を抱える黒い着物の男の姿。
歯をぎり、と鳴らし全速力で走り相手に正面に回れは刀を眼前の男に向ける。
_何処の者だ。
(雲に隠れていた月が顔を出すと同時に相手の顔も照らされる。
相手はつい先日会ったばかりの代理受取人の男。
子供を抱える相手の隙を付き、一瞬で切り掛かってははらりと落ちる黒い布。
しかし顔を背けられたまま此方の隙を付き逃げられてしまってはまた一から探す手間になり。
焦る気持ちを抑え一度冷静になる。幼い子供を攫うのならばきっと売りに出す筈。
敢えて孤児荘の子供を狙ってきた辺りを見ると己に恨みがありそうな存在。そしてあの男はあくまでも依頼人なのだろうなと。
急いで真っ直ぐ向かったのは花街の奥にある少女の買取場。
売られてきた子供は其の美しさや肌の白さにより欲しがる店は多く、一度競売に出される事もある。
相手が孤児荘の少女を受け渡し、報酬を受け取り其の場を去った途端、競売の管理者である男に近付き背後から首元を腕で押さえ込む。
_其奴はまだまだ餓鬼だぜ?しかもお転婆と来た。仕込むのに何年掛かるかわかんねぇぞ。そんな餓鬼よりも、俺の方が面白い見世物できるぜ?
(甘い言葉で囁き疑う様な視線を向けてくる管理者に「最近の化物の正体は狼人間らしい。俺が其の化物だと言ったら?」と囁くと管理者は興味ありげな視線を向けて来て。
「まぁ待てよ。条件がある。其れが呑めないなら大人しく其の餓鬼は受け渡すよ。まず其の餓鬼は俺に預ける事。そして見世物をやるのは一回きりだ。顔を知られる訳には行かないから面か何か用意してくれ。どうだ?此の餓鬼を仕込むまでに数年かけた所で売れるか分からない、其れよりも一夜でボロ儲けの方が良い話じゃねぇか?」と。
男の前でほんの僅かに狼化すれば男は人の悪い笑みを浮かべあっさり了承してくれて。
(孤児荘の少女を横抱きに抱えたまま孤児荘へ到着すると寝室にそっと寝かす。
明日は相手を令嬢の元に運んだ後は、見世物の仕事。
花街にてお祭り騒ぎで行われる事を予想しては令嬢が相手と外に出てくるのだけは阻止したい所。
令嬢の依頼内容は相手を一晩買いたいと言う事だったし所詮行われるのは男女の営み、外へ出る事は無いだろうと僅かばかり安堵しては裏口の鍵もしっかりと施錠し漸く自室へ戻る。
子供達だけは何としても守らないといけない、自分の様な思いをする子供はいなくて良い。
無意識の内に歯を食い縛っては静かに眠りに着いて。
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