主 2023-02-11 00:33:03 |
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(掴まれた腕、驚きながらも振り返れば相手の姿があり僅かに身構えるもやや早口で語られる相手の言葉に呆然とする。
段々と整理されていく脳内、目前の相手は嘘をついている様には見えずにこれまでの己の葛藤は何だったのかと恥ずかしくなって来て。
顔を隠すように俯きながら髪をぐしゃりと掴み大きな溜息を溢す。
青年の事を問われどこまで話して良いものかと頭を悩ませる。
が、しかし、誰よりも相手に誤解をされるのは心苦しいと思う気持ちには逆らえずに静かに口を開く。
「いや、あれは、…あいつの悪い冗談だ。…というかあいつの事は良く分からない。能力を持ってて見世物屋に居たって事くらいしか。」
(昨夜の出来事を簡潔的に話していた所、立ち話をしていてもと思い、柄にも無く取り敢えず何処かに入ろうという旨の提案をする。
久し振りに相手と並びほんの数歩歩いた所で路地から勢い良く飛び出して来たのはまさに今相手に話していた赤髪の青年。
あからさまに眉間に皺を寄せるも青年はにっこりとした笑みを崩さないまま相手に『こんにちはー!』なんて挨拶をしており。
「仕事以外で関わる気は無いんだが、」
『まぁまぁ!それより何処か行くの?俺も一緒に行って良い?』
「悪いが俺はこいつと話があって、」
(己の言葉を遮る様に青年は相手の前に立ち『一緒に行っても良い?』と笑顔で問い掛けていて。
強引な誘いに痺れを切らし、青年の肩を掴もうとするも青年は相手の手をきゅっと握り『兄さんのお友達でしょ!?俺とも仲良くしてよー。俺友達いないからさ!一緒に甘い物でも食べよ!』としつこく誘っていて。
(青年ははなから己と相手の言葉など聞くつもりも無かったかの様に強引に着いて来ては取り敢えずと入った茶屋にて呑気にあんみつを注文しており。
折角の相手がいても青年の前では深い話は中々出来そうに無い。
あんみつと抹茶を運んできた看板娘が相手に微笑みながら『あら先生。今日は燐さんは一緒じゃないの?』と声をかけるのに反応しては相手が口を開くより先に口を出す。
「燐のおままごとに付き合わされてただけだとよ。」
『そうだったの!?町中先生と燐さんの噂でここ暫く持ち切りだったのに…。私もお似合いの二人だな、なんて思ったり。』
「顔が同じなんだ。俺ともお似合いって訳だな。なら次は俺と先生の噂でも流しといてくれ。」
『あら!兄さんさては、』
「燐への当て付けだ。勘違いするな。」
(相手と兄の関係の誤解を知った以上、“持ち切りの噂”を聞くだけでも苛立ちが勝り、また柄にも無い事を言ってしまったと後悔する。
『こらこら兄さん。そんなに噂が立て続けに広まったら先生にも迷惑かかっちゃうでしょー。』
(青年が匙を指で遊ばせながら指摘して来た事に、言われてみればそれもそうか、なんて納得しつつも内心は本当に相手と己の噂が広まって仕舞えば良いのになんて思っていて。
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