主 2023-02-11 00:33:03 |
通報 |
『爛はあーいうのが好きなんだね。なんか意外。でもあの赤毛の子、何処かで見たことあるような。ね、露草もそう思わない?』
「…さあ。」
『うわ、今迄で一番の仏頂面。…今夜はお楽しみみたいだし直ぐには本当のこと伝えに行かないほうがいいかもね?』
( 兄の茶化しはあまり耳に入っていなく、相手と青年が去った夜道を見据える。
相手は何処か焦っていて弁解しようとしているようにも見えた。
だが、真実(青年を買ったこと)がバレたら体裁が悪く否定しようとしたのかもしれない。
また胸の蟠りが増えたと短く嘆息を零すとさっさと目の前の案件を片付けようと少々雑に兄の手を引き仕立て屋の元へ向かって。
( 翌朝、寺子屋にて掃除をしてくれる妹を少し離れたところで眺めながら考えるのは昨夜のこと。
仕立て屋の案件は追加の頼まれごと(兄との軽い絡みを要求された)はあったが上等な着物は手に入れ無事に御婦人の手に。
御婦人はミケさんのことを未だに忘れられないでいたようだが、仕立て屋の着物を見た瞬間目が輝いて態度は急変。
ミケさんへの興味も己たちに向けられた敵意も薄れたようでひとまず一件落着。
然しである。問題を解決する過程で起きた事態のほうが今は深刻で朝から眉間に皺が寄っていて。
『…兄さん怖い顔。昨日の夜出掛けたたみたいだけど何かあったの?』
「あった。…すまない、少し出掛けてくる。もうすぐ燐が来ると思うが寺子屋の番を頼みたい。」
『それは構わないけど…霧ヶ崎さんのところに行くの?』
( 察しの良い妹、なんでわかったと言う表情で見返し言葉は発さずに短く頷くと「頼んだ。」と軽く肩を叩き、兄とのことを打ち明けるつもりで孤児荘へ向かって。
( 時は戻り昨夜、青年は己と兄と別れ再び相手と二人きりになってからも逃げる素振りはなく相手の腕の中に収まり上機嫌に足をぶらつかせる。
『ふふ、本当に俺のこと買ってくれてもいいんだよ。なんて。兄さんも仕事なんでしょ?ねぇ、提案があるんだけどさ。誰が俺を攫ってくるよう頼んだか知らないけど、俺をその組織?依頼主か誰だかに引き渡したあと、その依頼主に頼んで俺と組んで一緒に仕事しない?兄さんと二人なら何でもできるから絶対に儲かるし楽しいと思うんだよね。…お願い、俺また一人ぼっちは嫌だし誰かの言いなりになって閉じ込められるのはやだよ。』
( 青年は明るさと寂しさを上手く織り交ぜて眉を下げては瞼を伏せ相手の着物の合わせ部分をキュッと握って下唇を噛んで。)
トピック検索 |