主 2023-02-11 00:33:03 |
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( 妹と名乗る女の話は実感は無かったが嘘とは思えず、泊まる場所もないと言うので押しの強さにも負けてひとまず寺子屋の手伝いをさせていたところ、兄が来て渡された菓子を受け取り。
「へぇ、変わった見た目だな。いい匂い。…団子もありがとな。」
『別にー。…あ、そう言えば妹さん、来てくれたんだね。さっき門のところで会った。此処に泊めるの?』
「ああ、実感がなくて初対面なのにどうかしてると思うんだがな。少し頼まれごとをされたんだ。ただ仕立て屋の一件もあるし直ぐには取り掛かれないから其れまでは寺子屋の手伝いをしてもらいながら空き室に泊まってもらうことにした。」
『ふーん、初対面の女の子泊めちゃうなんてだいたーん、なんてね。…そうそう、仕立て屋だけど早速さっき飛脚から文を渡されて今夜中にも仕立てられるってさ。ただ最後にまた俺たちの恋人関係を見たいらしいから受け取りは一緒にだって。』
「…仕事は早いのに面倒だな。」
『だから今夜もよろしくね、露草。』
「仕立て屋から受け取ったら彼奴には本当のこと話すからな。」
『はいはい、さ、俺は子どもたちのところ言ってくるよ。』
( 手をひらつかせて子どもたちの元へ向かう兄の背を見送り、先程受け取った焼き菓子に視線を落とす。
相手は異郷の菓子は好きだったりするのだろうか。
団子を受け取ったときの反応も直接見たかった。
妹のことも、兄のことも色々話したい。
考えることは多いが考える大半は相手のこと。
ひとまず、今夜の仕立て屋の一件を片さねばと焼き菓子は後に取っておき己も子どもたちの元へ向かって。
( 夜の花街。
見世物やの一室で赤髪の青年はむくれたいた。
昼間見た相手の姿。其の姿を見た瞬間昂ぶった感情。
夢の中で何度も見た相手の姿。
きっと夢の中の相手と昼間に見た相手は別人なのだろう。
だがそんなことはどうでも良かった。
自身と同じ異彩な髪色。見世物小屋に関わりを持つ能力者。
少し前に相手が少しの間見世物小屋で其の能力を開放した時、電撃が走ったのだ。
__嗚呼、なんて優美なんだろう。此の人のことを待ってたんだ。此の人なら人から忌み嫌われ堕しに使われる虚しさや諦めも、寂しや孤独も分かってくれる。
相手の孤独も己なら埋められると、会ったこともないのに一目見て抱いた感情。
客に取り入って手に入れた肖像画を大事に眺め、漸く昼間に相手と会えたのに。
『でもきっと兄さんまた来てくれるよね?』
( 青年は何となく相手がまた来てくれる気がしてこっそりと屋根裏の天井の一角を開けやすいようにして、素知らぬふりをして退屈そうに畳に寝転んでいて。)
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