主 2023-02-11 00:33:03 |
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(翌朝、目覚めるなりのそのそと顔を洗いに行く。
子供達が次々に挨拶をしてくる中、通りがてら台所で昨夜の女性と年長の少女を見掛けては足を止めるも此方に気付いた女性が駆け寄って来るなり『昨夜は泊めてくれてありがとう。助かったわ。』と和やかな笑顔を浮かべていて。
「…別に。一応あんたは客人なんだから気を使わなくても構わないんだが、」
『じっとしてると落ち着かなくて。其れに料理は嫌いじゃないの。』
「今日は寺子屋に行くのか?」
『ええ。其の予定だけど…』
「なら、子供達と一緒に向かうと良い。昨日通った道とは言えあんたまた迷いそうだからな。」
『…確かに、否めない…。じゃあお言葉に甘えて。何から何までありがとう。』
(明るい日の元で良く見れば見るほど、女性は相手と似ており無意識に目を逸らしてしまうも女性は変わらず優しい態度で話ており何だか調子が狂う。
顔を洗い寝巻きから着替えては女性と子供達との朝食を済ませ、寺子屋に向かう女性と子供達を見送り。
縁側で煙管の煙を燻らせていた所、玄関を叩く音に気付き戸を開ければ何故か其処には兄の姿があり。
咥えていた煙管を落とし掛けるも変わらない表情のまま「何の用だ。」と問い掛ける。
『いきなりむつけないでよ。お届け物。』
(差し出されたのは団子の包み。
不意に脳裏に蘇る幼少期の記憶。
『-食べないの?餓死しちゃっても俺知らないよ?-』
幼い兄が包みを開けるなり態とらしく団子を地面に落とす。
脳裏に過った記憶に苛立ちを隠せず、団子を差し出す兄の手を思い切り払いのければ団子の包みはべしゃりと地面に落ちる。
『あーあ。勿体無い事しないの。…良かった。包みだけだよ地面に触れたのは。まだ食べれる。好きだったでしょ。団子。』
「…何しに来たんだ。」
『だから、届け物だって。露草からだよ。』
(兄の言葉に眉間に皺を寄せる。何故相手が自分に?と思ったが其れを問う事は無く、兄も何か話す素振りは無いまま用事は済んだとばかりに裾を翻して。
(寺子屋へ到着した女性は、道中『お姉さんって菊先生に似てる!』『家族なの?』と言った問い掛けを受けるも決定的な答えを述べる事は無く。
寺子屋の入り口の前で軽く身なりを整え直しては意を決した様に足を踏み入れるも、奥に見える相手の姿を見付けるなりやや足早で駆け寄り。
涙ぐんだ瞳で相手の腕を掴んでは漸く交わった視線。
掠れる声で『…兄さん。』と小さく言葉を漏らしてはじっと相手の瞳を見詰めて。
(兄が孤児荘を後にするなり自室へと戻る。
今日こそ依頼は入っていない物の、明日の依頼は中々に面倒臭い。
見せ物小屋から一人の少年を攫って来るとの事なのだが、少年の特徴として書かれている内容が“赤髪”のみ。
単に赤髪と言われても、明るめの茶髪の事も赤髪と言えるしと頭を悩ませる。
町はきっと相手と兄の話で溢れている為出向く気にもなれず自室で昼寝でもしようと寝転んで。
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