29087 2023-02-03 15:10:13 |
|
通報 |
(パイプ椅子に座れば、相手は前置きも置かずに早速DVDをプレイヤーへと挿入する。ディスクが入っていたジャケットには異国の文字で書かれていたため、なんと表記されていたかはわからない。フィギュアスケートを鑑賞するときの心構えなども分からぬまま、このまま始まるのだろうかとほんの少しだけ不安に駆られていると、傍の相手が解説は後にすると伝えてくれればならばひとまずは見ることに集中して。やがてテレビに映ったのは、スケートリンクに立つ1人の少女。よくよく見てみれば、隣の相手を少しだけあどけなくした感じであり、察するにこれは彼女の昔の演技のビデオだろう。身に纏った黒い衣装に彼女の雪のような白い肌がよく映えて、その対比が実に美しい。やがて演技の開演とばかりに荘厳なBGMが流れ始めればそれに合わせるようにテレビの中の少女は滑り始める。ここまでは家族が見ているのを横目で見たり、ザッピングの途中でよく見る光景だろう。しかし見ていくうちに、流麗な音楽に合わせて彼女の『妖精』のように舞う演技に段々と惹き込まれていき、フィナーレが近づいていくほど握られた両手の拳に思わず力が入り。やがて、相手が完璧なフィニッシュで演技を終えればテレビの中の観客たちからどっと歓声が湧き上がるのに対し、自分はというと「わあ…。」と、高揚しているかのように瞳の奥を輝かせながら静かに感嘆の息を漏らして。)
| トピック検索 |