とくめい 2023-02-01 15:49:08 |
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* 美秋
…よし、取れた!はあ…、良かった…。でも一体何でこんな所に…、ッ…?!わ──…!
( 長年使用されておらず年季経つ腐ち錆びている脚立だと知る余地もなく、一歩ずつ登り進める軋み音。不安定な作業台の足下部分を力支えてくれる妹のお陰で漸く天辺近くまで来れば、ふるふると震える肩腕を精一杯伸ばし大切な私物を手の中に確保し終え安堵の息吐き。直ぐ様顔を降ろし其方へ伝えて再度慎重に足を降ろしていく。先程感じた気配は一体何だったのか、そう脳裏に思わず余計な考え事をしていると──バキッ、と足場が折れた反動で身体バランスも崩れ投げ出される形で空中浮かんでしまう。恐れていた事が降り掛かり下に居る妹から離れた場所に衝突事故を避けなければ、と咄嗟の判断で上棚の一角へ手掴んだ瞬間。其々整理していた木炭と玉鋼、冷却材や砥石が次々と一斉に弾け飛んでゆく。そして宙に舞う二枚の依頼札、其れ等を追うように部屋の隅から何処か懐かしい香りがする形代の神具と強き精神が交差触れた時、一筋の眩う輝きを放つ桜花弁が四方周囲を優しく包み込む。付喪神として刀剣が人の形を成す、転倒傾く脚立を即座払い除けて少女二人を容易く両手に抱えれば安全な場所に移動させ。地上に舞い降りた二振りの内、鳥子色の彼がにっこりと微笑み掛けて。 )
*髭/切
……──おや、間一髪だったね。怪我はしてないかい?
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