美容師 2022-12-21 22:25:32 |
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腰を落ちつかせた途端に俺は何やってんだ…と心の中で呟いて天井を仰ぎ見る。本来なら声をかけた俺が責任を持って最後まで面倒見なきゃならねぇのに、初動をミスしたことで伊風に任せざるを得なくなってしまった。捜査は初動が一番大切だと叩き込まれたはずだろう、まだまだ未熟だ。ほんと、情けねぇ。脳内反省会を閉じてはぁ…と小さく息を吐いて視線を戻すと、俺の名を呼んでこちらへ歩み寄ってくる二人。お礼…?俺は声かけただけだ、別に感謝されるほど助けてはいない。そう思っていた。でも、少年の真っ直ぐな言葉は言わされたものではない。勇気を出して言ってくれたものだと伝わった。怖かったはずの俺に、だ。驚いて、目を見開く。あぁ、そうだ…落ち込んでる暇などない、助けるためには立ち止まってちゃ何にもならねぇんだと少年の礼にそう改めさせられ、僅かに頬を緩めて「どういたしまして」と少し嬉しそうに微笑んだ。
そうして数十分後、迷子の放送を聞いた少年の両親がこちらへ到着し、何度も俺達にお礼を告げて去っていく。少年が手を振るのに小さく一度だけ振り返してから久方ぶりであるこのデートの日を楽しみにしていた男へ謝罪と礼を告げ
「悪いな、俺が首突っ込んだことに付き合わせちまって。おまえがいなきゃ俺は子供もロクに助けられねぇらしい。おまえがいてくれて助かった。」
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