人魚くん 2022-12-05 23:13:05 |
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...ふっ、あははっ
( そうだ、当たり前と言えば当たり前だ。今まで自分が見てきた生き物達は一切言語なんて口にしなかった。だから生き物達の感想なんて考えたこともない。彼からすれば俺が“人魚”を知らないように、人魚もまた“人間”を知らないんだろう。美しい声が先月から、と紡ぐのを聞くと、そうか。先月は忙しくて殆ど来れなかったもんな。と納得する。しかし人魚なんてどういう仕入れをしたんだ。存在は確かだが、幻と言われる程珍しい生き物なのに。だけど疑問もそのままに、彼の無垢な可愛さに思わずくしゃりと笑ってしまった。「 うん。人間で合ってる。君と話す大きい人間は、俺だけだった?」ガラスの向こうの細い指先を目で追いながら、緩く小首を傾げて尋ねる。昼過ぎ、見物客も何人かいる中で繰り広げる二人の世界。「 ...もし怖がってるなら、大丈夫だよ俺は。俺はさ、ただ人魚に...君にずっと会いたかった人間の一人だから。君の味方だよ。」嘘言ってない、と付け足すのは無邪気な笑顔で。
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