人魚くん 2022-12-05 23:13:05 |
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......綺麗、
( 何か言わんとパクパクと動いた口は魚とは違う。人間と同じ唇で、薄らと細められた目の下には髪と同じ色の睫毛の影が浮かぶ。目の前の生き物の一つ一つの動作を金色の瞳に吸い込まれるように見つめていて、“彼”の言うことなんてほとんど頭に入って来なかった。まさに青天の霹靂。一度指の動きを辿ってボードを見たが、その時に気付いたマイクの存在。もしかして会話できるのか?ハッとして、それを手に取った。「 ねぇ、本当に、人魚...なんだよな?すごい...初めて見たよ...!!」目をきらきらと輝かせて目の前の水槽に夢中な様子は、周りから見たらさぞ変人だろう。息を呑むほど綺麗で、近づき難くて、だけどもっと知りたくて。どこから来たの?名前は?「 名前って、... 」畳み掛けようとした言葉を一度引いたのは、“彼”が怯えてるように見えたから。「 あ...ごめん、怖がらせちゃったかな...?」ガラスに付けた手をようやく離しては一歩下がって。
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