名無しさん 2022-12-02 18:14:09 |
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( 確かに自分が突き飛ばしたという事でベッドから転げ落ちるという大胆な行動も説明がつく。どこか自信なさげに肩を竦める姿から本意ではないのは明白なんだけど、何分致し方ない。加えてただでさえ不審極まりないこの状況で、彼の発言を否定することは出来ずちらりと訪客を盗み見ながら“ やぁ~お前がズルするからじゃんか~ ”なんて咄嗟に話を合わせるものの、見方に寄ってはぎこちない笑みが張り付いたままで。どうやら子供騙しのような言い訳が通用した…とは思えないが、特にこれ以上詮索する必要はないと結論付いたらしい。思っていたよりあっさり部屋を後にする二つの背中を遮る見慣れたドアが閉まると緊張が一気に解けてがくん、と項垂れる頭。そのまま顔を傾けて彼を見遣ると視線を交わして、長い腕を広げて床に体を預けて泣きべそでもかく素振りを見せる可愛らしい仕草を眺め、取り戻した平穏を噛み締めてほっと一息。徐にベッドから立ち上がって今正に開いていたドアの方へ足を運んではカチャ…と鍵を閉めて今度こそ二人きりの密室にしてしまう。…二人も来るなんて。力なく呟かれた言葉にそりゃそうだよ、お前がベッドから落ちた時凄い音がしたんだから、そう返そうとして初めて色々と出来事が立て続いたせいですっかり抜け落ちていた憂慮が脳裏に過って。いくら丈夫で健康的な体を持っているからって、この子は俺の大切な恋人な訳で。落ちた拍子に何処か怪我なんてしていたら…そんな思考とは裏腹に感謝の言葉まで口にするものだから。ああ、この子はチンチャ。踵を返して再びベッドへ腰を下ろすと苦笑いを浮かべる彼は日に照らされて少し眩しそうで、何処かあどけない。寧ろもっと寄りかかってくれていいんだけど、なんて勝手な歯痒さを抱くのはきっとどうしようもなく惚れてしまっているから。「 何でお前が感謝するんだよ。これは俺たち二人の秘密なんだから、二人で解決するのは当然でしょ 」少し不満げに唇を尖らせるものの、掻き上げた髪も困ったような笑みもなんだか崩してやりたくなって今度はぐしゃぐしゃと髪をかき乱しながら撫で回す。「 …それより怪我してない? 」特別痛がっている素振りが見られないことから大きな怪我をしている心配はないと見積もるも腕を摩る仕草は痛々しく。眉を下げて顔を覗き込んでは、自ら乱した髪を整えながら頭を撫でる手はまるで愛犬を慈しむように。更に縮こまった大きな身体は恐らく先程の発言を懸念しているのだろう。俺が怒ると思ったのかな?お前と時間を共有出来るならそんなことどうだっていいのに。顔色を伺うように紡がれた言葉に思わず笑みが溢れそうになるが、同時に芽生えてしまう加虐心。頭を撫でていた手をぱっと離し、笑みの代わりに薄らと目を細めたのは態と冷ややかな視線を向けるためで。もし思考が具現化するなら彼に垂れ下がった耳と尻尾が見えるように、自分にもにょきっと悪魔の耳と尻尾が生えてしまうかもしれない。途端につんとした態度で床に下ろしていた足をベッドの上に放り出して体勢を変えると、下で息を呑んだ彼と向き合う形で打つ伏せに寝転がり「 ん~…あんで。だって結局俺のせいになっちゃったもん…─ほらミンギュヤ、そこに正座して。 」頬杖を付きながらつぶらな瞳を見つめ、床の上で反省を示せと言わんばかりにもう片方の食指をすぐそばの足元に向けて。そんなにいじらしく振る舞われたらもっと意地悪したくなっちゃうんだよ。上がりそうになる口角をできるだけ結ぶように努めてながら。 )
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