名無しさん 2022-12-02 18:14:09 |
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( バタン、扉が閉まる音と同時に心に掛かっていた靄がすぅっと晴れて差し込む朝日のように再び光を取り戻すものだから。やっぱりヤキモチだったんだな、なんて何処か俯瞰的で。ただの日常会話だっていうのは何となく予想出来たし、こんなふうに一々聞いていたらキリがないんだけど、それでも目を丸くしてコップを置いた後真摯に答えてくれた彼が愛おしくて仕方がない。こんなふうにどうしようもない独占欲を抱いているにも関わらず、それでもお前は真っ直ぐに向き合ってくれるんだね。不意に不安気に眉を下げて自分を見つめる切れ長な目と視線がかち合う。だってさ、お前は今昇っている太陽みたいに人懐っこくて皆から愛される子だから。その射抜くような真っ直ぐな視線を独り占めしたいと思うのは不思議なことじゃないでしょ。俺だけ、なのかな。スープカップをテーブルに置き二人きりの空間が再来したことで少しの沈黙が出来れば、それをすぐに破る様にして何処か安心した様に頬を綻ばせて。「 そっか、…よかったぁ 」思ったより間延びした声が漏れ出てしまっては今になって大人気なく問いかけた内容が気恥ずかしく感じる。脳と表情筋が直結してるのかってくらいすぐに顔に出てしまう子だから、その言葉が真実だっていうのは考えるまでもなく分かりきってることだ。結果的に少し意地悪な質問をしてしまったかもしれないけど。そんなお前が大好きだよ。彼の口から紡がれる思っていたより大分無益なやり取りに笑顔を取り戻しせばくすくすと笑い声を溢し、捨てられた子犬の様な両目で恐る恐るといった様子で付け加えられた言葉に少し首を横に振る。変なことを聞いたから不安にさせちゃったかな、ダメなヒョンだなぁ。「 あにゃ、疑ってた訳じゃないんだけど…ちょっとヤキモチ妬いちゃったみたい。ミアネ 」悪怯れる素ぶりこそないがいつものように緩んだ口元ではなく控えめにきゅ、と口角を上げて謝罪をぽつりと。それから徐に手を伸ばしたのはテーブルの下に隠れた筋肉質な太もも。「 …、恥ずかしいから、これも2人だけの秘密だよ…? 」彼がこんな事言いふらすはずもないのは分かっているものの、やはりあんな些細な事で妬いたなんて誰にも知られたくないもので。知っていていいのは目の前に居る恋人だけ。誰もいない静まり返ったリビングでこそこそと隣の耳元で囁きながらも照れ臭そうにはにかむと、太ももに乗せた手の平をすりすりと這わせてゆったり撫でて。束の間乗せていた手を退け再びスプーンを持ち直し「 やぁ~、こんなに美味しいのに冷めちゃったら勿体ないね。食べよっか。」と先程の唇を尖らせていた態度は何処へやら。へら、といつものように緩んだ笑みを浮かべつつもまだ完全に満たされていない空腹に任せて再度一口頬張り、食事を再開して。 )
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