名無しさん 2022-12-02 18:14:09 |
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( 彼越しに見たリビングの陽だまりに、ふと“ あの頃 ” を思い出す。騒がしい部屋、狭いシステムベッドから引き摺り起こされて、逃げ出したリビングの床に無造作に倒れ込んだ体。全身を包む陽だまりと、惚けた頭に響く四方八方から聞こえてくる話声、笑い声、物音?煩いったらありゃしないのにその陽だまりの空間を俺は心地良いと思った_。あの頃と同じ陽、今も昔も変わらない陽だまりのように、俺にとってのヒョンであり今は恋人でもある君と過ごす日々がこれから素晴らしく温かくなるといいな。…それに、ほら。やさしく頭を撫でてくれていた手が、自身の頬を包み、綺麗なその手を涙が濡らしていくのに。まっすぐに見つめた瞳は想いをありありと見せてくれる。ドキドキと胸が鳴る、まるで初恋のように可愛らしい鼓動が胸いっぱいに響いた。君のやさしい囁きは影のような暗い空間には似合わない。天使の君にはきっと陽だまりのほうが似合うから。「 ん、ありがとう…ひょん、...。はぁ~...、もう、ひょんがイヤだって言っても離すつもりないよ俺...っ。」ぐず、と泣きべそをかく子供みたいに唇を尖らすのに、やっぱり変わらずの気の抜ける笑みが心をそっと解してくれるんだ。可愛らしい戯れに、つい目元が綻ぶ。鼻先がくすぐったい。「 へへっ.....約束する、 」頬を包む細い手の上へそっと自身の手のひらを重ねる。擦り寄るように目を細めて、涙の跡はそのままなのに無邪気に八重歯を見せて笑うんだからもうちぐはぐだ。少しだけ晴れた視界に彼が映る。触れ合う額から伝う熱と、視界に入る自身の髪と混じった彼の髪の色。此方をじっと見つめる甘い視線を辿って、その奥の瞳に映る自分。ねぇはにひょん。約束する、これからはヒョンと一緒に生きるから、全部二人だけのものだ。ずっとずっと…なんて、気が早いかな。ねぇ、その美しい瞳の奥に俺を沈めて。奥深くに俺を溺れさせてほしい。_ 名残惜しいけど、一段落つくと途端に空腹が蘇って苦しくなる。切なそうに重ねた手と体を離すと、体の横で名残惜しさが残ったまま、片手だけは軽く繋がる。「 あ~っそうだまだ終わってなかったじゃん~!...お腹減ったよ~。 」フライパンの中を覗いては炒めている途中で最悪の結果になった食材に。落ちた菜箸を拾ってぽつぽつと呟きながらシンクへ。分かりやすく目に見えない尻尾を下げつつ、「 ヒョン、ゴメンだけどテーブル拭いてくれる?今すぐ持ってくから座ってていいよ。」渋々手を離すとちらりと彼を見遣ってから目元を腕で拭う。焦げてしまった部分を捨てて、新たに作り直さんと手を洗えばまた料理がスタート。ものの数分で仕上がったキムチポックンパを二つの皿に盛り付け、ふぅ、と満足気に額を拭ったところでどこからか微かに聞こえた物音。...ああ、そろそろ何人かは起きてくる時間かな。慌ただしく動きながらも確認した時計。すっかり部屋に広がった光は完全な朝を告げていて。)
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