名無しさん 2022-12-02 18:14:09 |
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( どれだけ彼を好きか一通り伝え終わって、一先ず終わりの筈が。自分を呼んだ低く含みのある声に視線だけ上げると射抜くような熱い瞳の瞳孔が開いているのまで鮮明に分かり、次にされることを予測してしまい元々煩かった心拍数が嫌でも上がる。俺がその目に弱いのを、知っててやられる方がよっぽど楽なのに。唇をなぞっていたはずが掴まれた腕はじりじりと焼ける様で。好きだとか惚れた腫れたではこの気持ちは治るわけもないのにまた膨れ上がってしまうから困るんだ。瞬く間に景色が逆転したと思えば。こんな、覆い隠すように抱きしめられてしまって。なのに両手で抱きしめ返すことも許されずに掴まれた手首がじんじんと熱く疼くから、広い背中に回したもう片方の手が求める様にくしゃ、と衣服を掴む。瞼に感じた熱くて少し湿った接吻にぴくん…っと肩を揺らし、深く重なった唇の温度を感じでしまえば先程まで浮かべていたゆとりのある笑みなんて跡形もない。職業柄人の美貌や魅力に態々焦点を当てて見たりしないし、メンバーにだって同じだから彼も大目に見てやってたけど。…お前は自分の魅力を理解している質の男でしょ?なら少しは手加減してくれたっていいんじゃないの。でないと本当にこの熱で溶けてちゃうよ。大きな影に隠れているのを良いことに悩ましげに眉を垂らして、角度を変える度に震える睫毛は何度も切なく揺れる。…ああ、ダメ。そんなことしたら。ヒョンが可愛がってあげるから大人しくしてないとダメでしょ、やっぱりお前は悪い子だ。今頃皆はいつもみたいに眠っているのに、俺たちだけこんな。いつも使っているキッチンのはずが、明るい朝日に溌剌と照らされたリビングと切り離されて影を落とした其処は全くの別世界のようで。「 ……んぅ、…~…。 」不覚にも洩れ出てしまった甘く鼻から抜ける切ない声が空気に消えて、次第に肌が紅潮していく。天にも昇るような幸福感が心を満たして、どうするんだよ。彼だってこうなる前は普通の幸せを願っていただろうし、自分だって漠然と疑わずにいた。だからどんな手でも使って逃げられないようにこの手の中に堕としてしまおうって、それでもどうしても叶わないならば。普通の道を歩んでいく大きな背中を見送る夢だって、見た夜が何度かあったんだよ。なのにさ、お前はそんなものまで壊しちゃうの?…リップ音と共に離れていった唇はやっぱり名残惜しくて、触れ合う鼻先に自らもゆったりすり合わせて「 ─…ばか…、」熱っぽい吐息と一緒に絞り出したのは泣き出しそうなほど掠れた甘ったるい声。てっきり熱の籠った視線を向けられているのかと思いきや、此方を覗き込んでくる子犬の様な切れ長の双眸は予想に反するもので。すっかり蕩けてしまったブラウンの双眸で見つめ返すもののじわじわと涙の膜を溜めて光る瞳はどうしたって美しく、今度はぱちぱちと睫毛を上下させながら瞬きを繰り返し。気の抜けた笑みが視界を占領しては何処か呆れたような困ったような、何より愛おしさを滲ませた柔らかい微笑みを浮かべて。睫毛を伝う雫がなんだか勿体ない気がして、次に溢れてきた涙が頬を伝って落ちてしまう前に人差し指で救ってぺろ、と赤い舌で舐めてみる。…しょっぱい。お前が今までしてきた思いを煮詰めたみたい。「 そうだね、ご飯食べよっか。」首に回した腕は建前だけで紡いだ言葉とは真逆にぎゅう…っ、と離さないとでも言うかの如く抱き寄せ形の良い頭に手を置き赤子でもあやすようにぽん、ぽん、と撫でてやれば。腕を緩めて再び涙に濡れた愛おしい彼を見つめ直し、触れ合っている内に体温が上がりぽかぽかした手の平で濡れた頬を包み込み。「 …これからはもう、我慢したりしないでけんちゃな。だから今日は1日中一緒に居て、おやすみのキスまでしようね…? 」相変わらずの緩い笑みでまるで付け込むように囁き“ ヒョンとの約束だよ ”なんて勝手に約束を取り付けてしまえば、不意に─ちゅっ、と鼻先に触れるだけの口付けを落として。そのまま吸い寄せられこつん、と額同士を合わせて濡れた睫毛に甘い視線を注ぎ込み。これはね、契約のぽっぽ。だって恋人になった時点でお前に拒否権はないんだから。 )
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