名無しさん 2022-12-02 18:14:09 |
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( 今日に限って激しく鳴り続ける心臓の訳を考えたら、どうしたって行き着く先は“彼”になるのだけど。…おかしいんだよ、だって。彼を好きだと気付いて、その感情を自身に受け入れた“その日”から今まで、今日ほど煩く心臓が鳴ることはなかったんだ。何故って、思い返したら。どうやら俺は、“その日”から彼と二人きりになる機会を無意識に避けていたらしい。記憶を遡っても…彼と誰かを挟んでの会話が多く。ふと廊下ですれ違った一瞬、ステージ裏に降り立った時、たまたま傍にいた彼とアイコンタクトで笑いあった瞬間…そんなわずかな一瞬でしか、彼と二人きりの空間を作って来なかった。しかも故意に二人きりになった訳ではなく、どれも偶然。…今日、今この瞬間が必然だとしたら_。とくとくと、いつもより早めな鼓動が心地良いなんてさ。俺はやっぱり彼のことが大好きだと、改めて気づいてしまうから。もう…ヒョンのせいで感情が追いつかないよ。この世界ではない別の世界で彼とまた出逢う運命が存在するなら、友達にもそれ以上にも発展しないで、ただの他人として生きるだろうと考えていたのに。今はそれ以上を願ってしまう程、ハニヒョンしか考えられない。期待薄で示してみたが、ついに野菜とピーラーを手に取った彼を横目に見て満足気にふっと頬を緩める。手伝ってくれてる間は、余計なこと言わないだろ。…なんて、思い込んでいたのはやっぱり阿呆だ。「 …何だって? 」すっかり切り終えた食材はそのまま、熱したフライパンに油を敷いて、豚肉のパックを開けようとしていた時だった。聞き間違いだと信じたくて、一度止めた手をすぐに再開させる。…まぁヒョンがそれを許すはずないよね。「 …。何言ってんの俺ら男同士じゃん。」 ふと横目に見た、野菜を手に視線を下に落とす彼の表情。俺にとっては最早死活問題なのに、のうのうと話す声の柔らかさと表情の緩さ。何度見ても綺麗に生え揃った睫毛、バランスの良いパーツに骨格。手は細いのに骨張ってて、儚くて消えてしまいそうな綺麗さに、どこか芯の男っぽさが滲んでて…。素直な脳内は易々と想像を膨らます。ヒョンと、恋人同士、…。そんな脳内を悟られてはいけないと、態度は少し不機嫌を装い、視線が合ってしまう前に逸らした。火を通した豚肉と具材を一緒に炒めて、頭上スレスレの換気扇のスイッチをようやくオン。設定たって、そんなの…俺の気も知らないでさ。ただのお遊びだと巫山戯るのはさすが彼らしい。だけどそれは絶対に現実になり得ないことに思えて。…実際、その通りだから。「 ヒョンはつまんないかもしれないけど俺は忙しいんだよっ。絶対に選ばなきゃダメ? 」フライパンを振って具材を混ぜ合わせたところで、菜箸で具材をつついて呆れた様子を装い彼を見遣る。もっとこう…他にいい設定あったでしょ、何でよりによって。しかもヒョンが滅多にしない恋愛の話なんか。まるで拒否権はありませんとでも言うように3本立つ指と、ムカつくほど可愛らしい仕草。「 ん~…。ハニヒョンとは絶対同棲できないから、片思いがいい。」もうヤケになって淡々と、少しツンと棘のある答え方をすれば、後は勝手にしてくれとでも言わんばかりにフライパンを持ち直す。ヒョンのせいで舞い上がったり落ち込んだり、早朝から忙しいったらありゃしない。)
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