左 2022-10-15 22:14:32 |
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(恋人の声ならばどんな言葉を吐こうとも甘く扇情的に聞こえる。しかし一度臍を曲げてしまえば誘いに対する色好い返答さえ一抹の不快感を持って此方に届き、煙草を八本も消費する程待たされたという事実に自己中心的な思考は執念深く頭の中に不満を募らせ。傍から見ればいつも通り、しかし恋人に接するにしては些か素っ気無い態度でエレベーターに乗り込むと、不意に頬に触れた冷たい手の感触に横目で彼へ視線を遣り。その口から出た謝罪一つ、仕草一つで簡単に頑固な怒りは解れ、吐息のような浅い笑みが漏れる。いつだって己を惨めな気分にさせるのは最愛の恋人たった一人で、そんな幼稚な苛立ちを忘れさせるのも他ならない彼である。首元を撫でるその手首を掴み引き剥がすと再度身を屈めて視線の高さを合わせ、相手の意識を絡め取らんとするように静かでいて鋭い眼差しを向けては「恋人の機嫌を取る方法も忘れたのか?」と言葉とは裏腹に低く甘えるような声色で問いかけ。徐に咥えた煙草を指の間に挟むと濃い紫煙を愛してやまない恋人の顔へ吹きかけ、立ち込める煙の中で普段するそれよりかは些か乱暴に唇を重ね。下唇を食んだ後にはそこへやんわりと歯を立て形ばかりの不満を示し、「待っててやったのに、褒めてもくれねえ酷い男だ」と触れ合わせた唇の隙間から強請る声を零し)
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