左 2022-10-15 22:14:32 |
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(密閉された室内で一人絶え間なく副流煙を垂れ流していれば、否が応でも周囲に不快感が蔓延してくる。そんな事にはお構い無しに吸っては吐いてを繰り返すのは、最近お気に入りの以前よりタール量が増した煙草。以前恋人と口付けを交わした際「苦い」と囁かれた事が頭から離れず、正確にはそう口にした彼から漂う色香にあてられた衝撃が忘れられないのだが、何はともあれ甘い煙草を味わった後のキスは彼にどんな表情をさせるのかと、飽くなき恋人への探究心と愛情の賜物の選択である。ほんのりと感じる甘く重たい風味に頭の中が煙りくすんでいく感覚を楽しむ最中にも、幼い頃からの習慣が染み付いた脳内は自然と異常な程正確に時を刻み、漸く降ってきた恋人からのお開きを示す言葉へ「32分53秒」と待てを言い渡されてからそれを懸命に聞き入れ足元で不貞腐れていた時間を嫌味ったらしく呟き。咥え煙草で立ち上がるとご丁寧に吸殻を革靴の底で踏み潰して徹底した火消しを行い、方々から批難と侮蔑の入り交じった視線を浴びながらもその一切を意に介さず向かい合った彼の耳元へ身を屈めて唇を寄せ。「イイ子はベッドに入る時間だぜ、ダーリン」窓の外は日が傾き始め橙色に染まるところ。時間帯に不釣り合いな言葉は遠回しでいてそうでないような曖昧な誘い文句で、そのまま気だるげな足取りで歩き出し、開け放たれた扉を抜ければ先程うっかり命を奪ってしまった男の死体の傍を素通りしてエレベーターのボタンを押し)
(/はい。一旦帰宅し一夜明けてから任務に向かう流れで考えております!)
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