通りすがりさん 2022-09-29 11:16:31 |
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(ゲダツ)
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「ふごっ…むう、何か気楽に返事してはならぬ問いに返事した様な――妙な夢よ。」
鼻息だけで顔に張り付いていたオセロ版を吹き飛ばし、ギョロリと白目を剥きながら椅子から起き上がった蜘蛛頭の大男は、ふと割かし近くに何時の間にか置かれていた年季の入った、しかし良く手入れされた上等な鞄に気が付いて
「客の忘れ物か?…しかし朝の時点では無かった気がするが――ん~不審な。」
だが疑わしく思った割には不用心に蜘蛛頭の番頭はガチャリと鞄を躊躇無く開く。
「…ぬお!?――人形?――随分と凝った代物だな。人形師の客など居たか?…」
つんつんと、中に眠る精巧極まりない人間と見違えそうな見事なドールの頭を指で恐る恐る小突きつつ――螺の存在に暫くして漸く気付く。
「―この人形…もしや絡繰(からくり)仕掛けの類か?…ふむ、巻いてみるか。」
こうして青海番頭ことゲダツは軽率かつ興味本位で“彼女”の螺を巻いて…
>雪華綺晶
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