鍔 2022-09-23 23:31:31 |
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( まずい、と後悔したのは既に声を掛けたあと。刀剣男士とて今は人の身、そうそう無遠慮に戸を開け暴いていいものではない。大袈裟に飛び跳ねる相手の反応に合わせてこちらも身が強張り、次ぐに相応しい言葉を必死で考えるも、返ってきたのは脱力の様子。姿勢を崩した陰から見えるのは、ふわふわと揺れる黄の毛並み。「…………こんのすけ?」名前を呼んで覗き込む。真っ黒の瞳を円らにして固まる様を美しい手が掬い上げるように撫でると、強張った小さな体が弛緩していくのが目に見え、呼応するようにこちらも表情を僅かに和らげて。
今はあまり近付いてやらない方がいいだろう。ほんの少し羨ましそうに狐と戯れる様を眺め、彼のかんばせがこちらを向くと一度視線はその表情へと。述べられた理由には口を結んで幾度か目を瞬かせたあと、「そうなんですね」と、疑うことなく素直な納得を示し、そろりそろりと距離を詰める。僅かに身を竦めた気弱な霊狐に、怒ってなんかいませんから、と声を掛けてすぐ側に身を屈め、毛並みの柔らかさを掌で確かめるように撫でる。秋の深まる夜に丁度いい温かさだ。油揚げを夢中で頬張る姿に視線を落としながら、先の言葉を大真面目にまるきり信じ込み、少し申し訳なさそうに眉尻を下げて )
では、こうして特定の本丸に配属されてしまったのは少し残念ですね。政府にいる方が多くのこんのすけと触れ合えるでしょうから。
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