匿名さん 2022-09-15 18:22:16 |
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( 腕を振り払われれば、その勢いで尻餅をついてしまう。それでも懸命に相手の手を取ろうとするが、既に相手は立ち上がり、扉を強く蹴る衝撃音が建物の中へ響き渡った。
ゆっくりと立ち上がると、悪態をつく相手の声が自分よりも遥かに高いところから聞こえるのを感じ、憶測ではあるが其方の方まで顔を上げて「 私でも開けられないの 」と申し訳なさそうに呟いた。実際の距離は分からないが、一般市民に忌み嫌われる家柄なのは重々承知しているつもりだ。それ故、声のする方から数歩下がって、距離を取る。)
私が無闇に出入りしないように、外の警備が見張っているのよ。
ここの施錠が解かれるのは…食事の時間や他の家政婦達が私を訪れる時だけ。
…でも、貴方をここへ連れてきたってことは、もう本棟の人間をここへは送らないつもりなのね。
( 10歳の時にここへ移されてから、最低限の世話時のみ屋敷の家政婦や執事が雑務としてやってきていた。しかし、それも18やそこらになれば全て投げ出されると覚悟はしていたものの、16歳になった今日、その予想が現実になった。どうやら両親は早々と厄介祓いしたいらしい。
わざわざ此方へ出向き執事として彼を連れてきたということは、“我々は今後一切手を貸さない”ということだろう。 )
執事として仕わせるなんて私は望んでいないわ。
だけれど、逃がしてあげることもできないの。
( 上記をぽつりぽつりと付け加えれば、その目を伏せ、再度ごめんなさい、と静かに言葉を落とした。
渡り廊下も壁で囲われ、疎外されているとはいえ外出する時は嫌でも本棟を通らなければならない。肝心なところはいつも見張られているのだ。)
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