匿名さん 2022-09-03 19:19:45 |
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【 ヘレナ・アンティパス 】
落ちぶれた?ご冗談でしょ、まだいくらでもやりようはあるんだから。
( 少なくとも、自分が彼に媚びていることを理解する程度には頭が回るらしい。自分に安直に懐く男なら扱いやすかっただろうが、賢いのならそれはそれでうまく野心を煽って王座に誘導することもできるかもしれない。そうしたら自分は后にだってなれる。一番上手く行った場合の想像をして内心でほくそ笑みつつも、落ちぶれた第二王子なんて口ぶりを否定する。少なくとも成り上がれる希望があるうちは落ちぶれているとは言えないだろう。
彼は自分のそんな下心を見越したように野心を隠せと指摘してくるが、そもそも彼は他の貴族の男とは雰囲気が違う。女の前で見栄を張ったり、男だからと尊大に振る舞う様子もない。他人事のような口ぶりをする彼自身は毒気のない女が好きなのだろうかと思い尋ねつつ、シーツを尻尾で打つ背中を眺めて )
寮長も純粋で欲のない女がお好きなの?それならそうなれるように努力しますけど…
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【 アズール・アーシェングロット 】
( 長ったらしく硬い言葉を並べた契約書は、たしかに読んでいて面白いものではない。齟齬がないように作られたものだから仕方がないとは言えど、たしかに読み飛ばしたくなるという心理も理解はできる。しかし、そこで無遠慮にサインをしてしまえば他人に無様な隙を晒すことになる。あっという間にそれを捉えられてカモになったところで、契約だからと言われて泣き寝入り─自分のクライアントたちのそんな末路を思い返しながら彼女に共感するような相槌を打ってみせる。
彼女が契約書を読み終え、そのペンを署名欄に走らせたのを見て取ると、片手を差し出す。その手に契約書が吸い寄せられるように戻ってくると、署名をしっかりと確認した上でくるりと巻いてしまう。この契約で彼女の求める"愛"とやらへの下地が出来上がるかは分からないが、少なくともこの女の腹の中くらいは探ってやろう。そんな画策をしつつ彼女に微笑みを向け )
ええ、僕もあなたに愛情を抱くようになるのを楽しみにしていますよ。
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