匿名さん 2022-09-03 19:19:45 |
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【 ラギー・ブッチ 】
(照れるでも謙遜するでもなく、まるで言葉だけの喜びを返されればさらりと流されたような錯覚を覚え、絞り出した言葉のちっぽけさを改めて実感する。こんな言葉、お世辞も含めて今まで何回も言われてきたのだろう。やっぱり可愛げがない。花冠を被せて褒めでもしたらきゃあきゃあと無邪気に騒ぐスラムの子供たちを思い出す中、唐突にフードが取られぺたりと反射で耳が伏せり、彼女に合わせて足を止めるとこちらを覗く紫の目に射抜かれ身が竦む。くっきりした二重、すっと伸びる睫毛。どうにも落ち着きを欠いてしまうのは慣れていないからだ。いつの間にか口内に溜まった唾液を嚥下し、向けられた要望を反芻する。言われるがままにその名を口に出し──考えなしの頭に敬称の問題が突き付けられる。果たして呼び捨てにしていいものか。かと言ってヘレナさん、なんてのもむず痒い。無言でいるわけにもいかず、結局覚束ない着地をすると、訝しげに眉を寄せ満足を問い。)
……。ヘレナ───…くん。…で、いいッスか。
【 ドロシー・エルリッチャー 】
部屋まで、……。
(言葉に詰まるような反応に少し首を傾けるが、その先に続く言葉を聞けば内心で納得し、僅かに目を細めて。まるで子犬か小さな子供みたい。素直に求めてくれるのは愛嬌があるし、枯渇した愛情の受け皿に水が注がれていく感覚を覚える。しかし留学して早々男を部屋に連れ込んでいた、なんて噂が流れようものなら、今後の愛に溢れた学園生活に支障を来すこと請け合いだ。彼が愛故の独占欲を燻らせ、噂の流布が目的だというのならまだしも、どう見てもそんな様子はない。部屋に上げてアプローチするほどの難度でもなさそうだし、ここで迎え入れる道理はないだろう。いかにも気恥ずかしそうに顔を俯け視線を逸らし、羞恥と申し訳なさが入り混じった小さな声でぼそぼそと呟くように述べると、ちらりと顔色を窺って。)
でも、……男の子を部屋まで案内するのは、…。ううん、変なことされるとか思ってるわけじゃないの。でも周囲の目もあるし…。
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