匿名さん 2022-09-03 19:19:45 |
通報 |
【 ヘレナ・アンティパス 】
( 式典が終わり、寮ごとに新入生が分かれるのに合わせて自分もサバナクロー寮生の群れの内に入る。件の第二王子の目につくように前方へ行きたいとは思ったものの、ガタイのいい生徒たちを掻き分けて彼のもとまで行くことは難しかった。前方で固まっているのはがっしりとした体つきの獣人数名。忠誠心が厚いのか自分と同様に王子に取り入りたいのか分かりはしないが、正直いって邪魔だ。
そもそも、この群れの中もなんだかむさ苦しい。たしかにサバナクローは女性には向かないかもしれないと先程の新入生の言葉に納得しつつ、もっとよく見える場所に移動したいと思案してあたりを見回す。しかしあいにくなことに、自分が通れそうな道も見当たらない。すると先程まで話していた彼がフードを深く被っている様子が目に入り、手持ち無沙汰を誤魔化すようにその隣へ立って )
そんなに深くフードを被って、お尋ね者みたい。…何か後ろめたいことでもあるの?
──────
【 セベク・ジグボルト 】
1年生のセベク・ジグボルトだ。お前はたしか2年の留学生だったか…?
( 彼女の柔らかな声が"どうしても"と甘えるように応えるものだから、頼られているような気がして胸が切なく締め付けられる。この教材を集め終わったら、彼女は自分に優しくお礼の言葉を掛けてくれるのだろうか。そんな期待に胸が高鳴るのを自覚しつつ、一冊一冊向きを揃えながら教科書をまとめる。そのうちに彼女から学年を問われると、一度教科書を拾う手を止めてそちらへ視線を向ける。
彼女の瞳が自分を見つめていることに、彼女が今この瞬間自分を意識していることに甘やかな高揚を覚えると思わず息が止まりそうになる。しかし彼女が自分の返答を待っていることを思い出すと、すぐに自分の学年と名前を答える。そうして質問をしてくれるのも、まるで彼女が自分に興味を持ってくれているような気がして嬉しさが込み上げてしまう。それが情けなく表情に現れないよう努めながら、散らばったものを集め終えて )
…ほら、僕の方は集め終わったぞ!お前のも僕に渡せ、そのくらいの量なら僕が一人で運んだほうが早い。
トピック検索 |