協会 2022-08-04 14:19:24 |
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「昼間からため息かい?」
がたん、ギルシャの対面の椅子が大きく揺れた。
相席の許可も取らず無遠慮に腰かける薄水色髪の女の姿を、きっと彼はよく知っている。
最も、この街に住む者であるならば、誰であろうと一度は顔を見たことがあるのだろうが。
「そういうのは幸せが逃げると言うよ」
「何処かの世界の迷信だが、しかし成程、君のような有名人が憂鬱そうにしていれば幸せの方だって逃げたくもなる」
「ああ、そこのウェイター君、コーヒーを淹れてきてくれるか」
「彼と同じブレンドで」
語りには軽口を交えながら、ウェイターを片手で使いにこやかに手を振った。
『パラ』という名で知られるホムンクルスの特徴、性格でもある、相手が誰であろうと距離感が近い。
ギルシャの仕草を真似るようにテーブル上に片肘を突いて、表情を覗き込もうとする。
「退屈半分、不満半分」
「……と言ったところかな」
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