匿名さん 2022-06-30 00:47:59 |
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( この世に生まれ落ちてから、もう十何度目の夏。もう、何千日目の平凡。春が来て夏が来て、秋が来て、そして冬が来る。その繰り返しの中で己は一度も平凡から脱したことはない。それは能力としての意味でもあるし、繰り返される日常としての意味もある。己の人生を大きく揺るがす非日常は訪れず、永遠に平凡で普通の日常を繰り返すだけの、そんな日々。
冷房の効いた室内。外から聞こえる蝉の鳴き声。もう随分暑くなったな、なんて頬杖ついて外を眺めている己の耳に届いたのはガラ、と教室の扉が開けられる音と、それからワッと騒めくクラスメイトの声だ。”え、誰?転校生?かっこよくない?””え~っ、やばいまって超イケメンじゃん!”なんて熱の上がり湧きあがる教室の雰囲気に、ふと教室の正面に視線を向けた。
「__ッか、」
……っこいい。目を見開く。思わず洩れそうになった声を息を吐くことで押し殺した。
担任の横に立つその男はまるで同年代とは思えなかった。すらりと長く細い体躯の上には人形の様に整った顔がある。白い肌、色素の薄い瞳、鼻筋の通った鼻、薄い唇。そのどれもが他者を惹きつけるには十分すぎる要素であった。クラスメイトがここまで騒ぐのは当たり前すぎる存在に、己も例外ではなく糸を引かれる様に貴方に魅入っていた。
今までのただ繰り返されるだけの平凡が、普通が、日常が大きく塗り替えられていく音がした。)
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