狐の面 2022-06-16 12:41:30 |
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───ほぉ。私に言霊の力があると見破っているのか。ならばどれ…、まだ完全には落ちていないその心を私への想いで溢れさせてやるとしようか。
( くつりくつりと喉を鳴らし、些か不満気味の相手の様子を楽しそうに見つめながらも指の間を抜ける髪はあともう少しできっと以前のような絹糸のように滑らかになることだろう。今代の嫁は少し特殊だと聞かされていた。身辺調査を依頼し諸々と調べさせてはいたが余程孤児院も特殊なのかどうか、あまり良い環境とは思えない場所で育ってきたのは明白。大人びた言動はもしかしたら脆い脆い心を守るためかもしれない。やけにつけた知識もきっと少しでも強く見せるためのものだったのかもしれない。真意を聞いていない故に憶測でしかないが、滲み出る言葉の節々に込められた思いや動作は隠しきれないもの。畳に頬杖をつきだらしなく横になりながらも、ちょいちょいと尻尾の先で相手の頬を撫でてやればぎゅっと抱きついてきたそれは年相応のもの。目元を細めて慈しむような視線を向けていたが、相手の返答にピクリと頭の上の耳を動かして。狐ゆえの悪戯心かそれとも、ギシと畳が軋む音と共に生温い風が緩やかに吹き抜けたかと思えば開け放たれていた襖が全て閉じ広かった部屋も些か狭く思える密室へとなっており。昼だったはずがやけに暗いのは襖が閉じたせいか、いつの間にか部屋の隅にぼんやりと灯りがあるのみ。ゆっくりと上体を起こして、胡座をかいては相手の細い腰へと腕を回し軽々と足の間へと運ばせてしまえば、卑しくも畏怖と煌めく金色の瞳、口の端から覗く犬歯を躊躇いもせずに小さな頬を片手で鷲掴みにしては「ごらん」と付け加えて無理に襖の方へと顔を向けさせる。閉じられたそこはゆらゆらと揺れる炎の灯りで朧げながらもしっかりと映る9本の尾を持つ4本足の獣の姿 )
いいか…お前の相手は“狐”だ。どんな悪戯をしてくるか分からないよ、もしかしたら気が猛ってその細い喉元に噛み付いてしまうかもしれない。───なんて、理性があるうちは大丈夫だがね。
( 再び自分の方へと向きを変えさせては頬を掴んでいた片手をするりと滑るように細い首元へあてがってやれば、身を屈めて大きく口を開ける。これだけだってその首は食いちぎれてしまいそうだと内心思いながら、歯先が触れるか触れないかのところで口元に笑みを浮かべるとポンポンと頭を優しく撫でてやれば辺りもいつの間にか先程までの和室と変わりなく。ちょうど部屋へとやってきた使用人に食事を片付けるよう添えてはそのまま片腕で相手を抱き上げて部屋を後にし。「お前さんに見せたいものがある。少し散歩しようか」とそのまま玄関へと向かえば適当にあった小さなサンダルを相手の足へと履かせてやり、自分は裸足のままだが今度は手を繋ぎたいのか優しくもあまり有無を言わさないそれのまま手を引いては外へと出て )
( / 遅くなってしまい申し訳ありません。バタバタとしていて、せっかくの時間もなかなか取れずに……落ち着いてきたので早めの返信になるかと思いますが、よろしくお願いいたします。 )
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